大会で入賞した。海外研修へ参加した。生徒会長を務めた。総合型選抜の志望理由書には、目を引く実績が並びます。
ところが、肩書きの大きさだけで合否が決まるわけではありません。面接で「なぜ始めたのですか」「途中で何を変えましたか」「大学で何を確かめたいですか」と問われたとき、借り物の物語は止まります。
華やかな実績が不利なのではありません。実績を、自分の成長を説明する材料に変えられていないことが問題なのです。
総合型選抜は「何でもありの一芸入試」ではない
文部科学省は総合型選抜を、書類審査と丁寧な面接などを組み合わせ、能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価する方法と位置づけています。各大学は、小論文やプレゼンテーション、口頭試問、教科のテストなども組み合わせます。
実際の評価方法や配点は大学・学部ごとに異なります。「全国共通で、行動力があれば受かる」という単純な制度ではありません。学力を確認する仕組みもあります。
ここでは総合型選抜を、制度の歴史的な定義ではなく、本人が経験から学ぶ過程を読み取る試験として捉え直してみます。
見るべきなのは、活動の看板だけではありません。本人がどんな問いを持ち、何を調べ、どう動き、結果を受けて何を変えたかです。
大きな実績ほど、本人の仕事が見えにくくなる
「全国大会に出場しました」という一文には、チーム、指導者、学校の環境、資金、偶然が含まれています。本人が何を担ったのかは、その一文だけではわかりません。
反対に、「文化祭の来場者アンケートの回答率が低かったので、質問を十問から四問に減らし、回収場所を出口へ移した」という経験は小さく見えます。しかし、課題の発見、仮説、変更、結果がつながっています。
選抜で伝わるのは、活動の規模よりも、本人の判断が見える具体性です。
実績を盛るほど評価されると考えると、子どもは有名な活動を集め始めます。すると、自分で問いを立てる時間が減り、説明はパンフレットのようになります。
面接で確かめられるのは、物語の一貫性である
強い志望理由は、きれいな成功談ではありません。
- 何に違和感を持ったか
- 最初にどう予想したか
- 自分は何をしたか
- 何が予想と違ったか
- その後、考えや行動をどう変えたか
- 大学で次に何を確かめたいか
この順序で話せると、過去の活動と大学での学びがつながります。
たとえば地域イベントを手伝った経験があるなら、「地域活性化に貢献しました」で終わらせません。来場者が増えなかった理由をどう考え、誰に話を聞き、どの数字を見て、次は何を試したいのかまで言葉にします。
選抜で読まれるのは、完成した人物像ではなく、更新できる人かどうかです。
親が作った正解は、子どもの声を消す
志望理由書を親や塾が直すこと自体は問題ではありません。伝わりにくい文章を整え、事実関係を確認する支援は必要です。
ただし、「この経験は社会課題につなげよう」「リーダーシップを強調しよう」と大人が物語を決めると、面接で本人の言葉が出なくなります。
親の役割は、立派な答えを渡すことではありません。「そのとき何を見たの」「なぜそう思ったの」「次にやるなら何を変えるの」と、経験の中にある判断を掘り起こすことです。
「華やかな実績から、落ちていく」というタイトルは、受賞や挑戦を否定するものではありません。看板が本人の思考を隠すとき、華やかさが助けにならないという意味です。
今日からの一つの行動
子どもの活動を一つ選び、「始める前の予想と、終わった後に変わった考えは何?」と聞いてください。答えを評価せず、そのままメモします。

出典
- 文部科学省「大学入学者選抜実施要項」2026年, https://www.mext.go.jp/content/20260529-mxt_daigakuc02-000005144_1.pdf
- 文部科学省「令和8年度大学入学者選抜について」2026年, https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1412102_00011.htm
- 文部科学省「大学入学者選抜における好事例集」2026年, https://www.mext.go.jp/content/20260327_mxt_daigakuc02_000005144_1.pdf