終わらない働き方改革!ロボット・生成AI時代の多様な組織戦略、人的資本経営【iU組織研究】

Work with Robots Lab
Lab

iU大学のマツムラゼミで、人的資本経営と組織戦略、はたらき方改革について研究しているiU組織研究機構。いま、我々がどのような部分について興味を持っているのか、についてご紹介しています。

どんなテーマを研究しているのか、そして今、働くことや人事・労務の世界で何が起きているのかについてお話しする動画を公開しました。

Sponsor Link

iU組織研究機構とは?未来の働き方を探求するシンクタンク

まず、iU組織研究機構について。この機構は、2024年8月に設立された、大学と共同で運営する産学連携団体です。

「先進的な組織技術と雇用政策を捉え、人的資本経営、産業創造、人権多様性、未来の働き方を作る」雇用系シンクタンク。一言でいえば、働き方がものすごく変わっている現状を踏まえ、未来の働き方を様々な方々と一緒に考えていこう、という目的で活動しています。

特に、法改正や政策の変化、注目のテーマである人的資本経営、多様性を包含した働き方、そしてロボットや生成AIが多様に活用される中での働き方といった主題について、様々な企業と共同で研究を進めています。

代表理事の松井勇策さんは、社会保険労務士(社労士)として、企業の法務・政策面からの支援に長年携わってきました。労務トラブル対応はもちろん、法令や政策に基づいて企業変革を支援するコンサルティングも行ってきました。

大小様々な企業での、実務経験が今、このiU組織研究機構での活動と結びついています。まさに、実務と研究がクロスする形で進んでおり、実情を素早く反映することができる研究が、魅力だと感じています。

固定的なイメージから一変!働く世界の劇的な変化

人事や労務と聞くと、まだ多くの方が「固定的なルールや前例に従う領域」というイメージをお持ちかもしれません。企業側から見ても、そのような雰囲気が強い領域だと見ている正直な企業も多いでしょう。しかし、現実は全く異なってきています。

変化の背景にあるのは、まず少子高齢化の進行です。

これにより、様々な方が多様な働き方をする必要が出てきたり、どうやって人材を確保していくかという課題が深刻化しています。地方では、ロボットと一緒に働かないと会社が持たない、といった状況も生まれています。また、外国人の方々とどう一緒に働くか、という点も重要です。

このように、根底にあるのは多様性のある働き方です。

そしてもう一つ、技術のすごい速度での変化に対応しないといけないという軸もあります。

これらの変化を実現するため、戦略的な法令や政策が、毎月のように、近い速度感でどんどん出てきています。こうした動きを捉えた上で、企業をどう変えていくか、ということが、人事・労務管理において非常に重要になってきているのです。特に、ここ2、3年でこの変化のスピードと重要性が強まっており、その最たるキーワードが人的資本経営と言えるでしょう。

「働き方改革」はもう終わり?いいえ、今は次の段階です

「働き方改革」という言葉は、テレビニュースなどでもよく耳にしたかと思います。

2019年に多くの関連法案が施行され、運輸、医療、建設といった一部の業種では2024年が猶予期間の終了年でした(いわゆる2024年問題)。

多くの方々が「働き方改革はこれで一旦終わりかな」と思われたかもしれません。しかし、実はそうではありません。

大きく見ると、2019年の働き方改革は、日本の働き方を大きく変えていくための、政策の基盤整備でした。

これは、日本の労働慣行が、特定の働き方に過度に偏り、長時間労働が常態化し、多様な働き方が認められにくいという現状認識に基づいています。この状態では、多様なものを多様に進めることが難しい。

そこで、まずしっかりルールを揃え、過重な働き方を是正しよう、というのが2019年の大きな目的でした。これはあくまで第一段階です。

それが一定程度浸透したか検証した上で、次の段階として、各企業がそれぞれの特性や課題を捉え、働き方を工夫していくことになったのです。

これを人的資本経営と呼ぶこともあります。

この動きを後押しするのが、法制度の変化です。最もインパクトが大きいのは、上場企業に対し、2023年3月期から人材戦略の開示が義務付けられたことです(金融商品取引法)。これは、2019年の働き方改革から4年越しで、企業が自社の課題を捉え、戦略を立てて進める段階に入ったことを示しています。

さらに、働く上での基盤となる労働基準法が、この人的資本経営の目的意識に沿って大改正されることがすでに決まっています。おそらく2026年に国会に提出され、2027年に施行される可能性が高いと見ています。これもまた、各企業が自社の課題を掴み、戦略を構築する、人的資本経営型の法制度へと変わる大きな流れです。

日本の課題:低い生産性と多様な企業風土

過重労働という言葉が出ましたが、日本は先進国の中でも労働生産性が低いという課題を抱えています。これは、これまで「人を増やす」「時間を増やす」ことで生産性を上げてきた日本の働き方の結果とも言えます。

しかし、少子化で人は増やせず、多様な働き方を認めると時間も増やしにくくなります。

この状況で生産性を維持・向上させるためには、生産性向上とエンゲージメント向上という2つの軸が極めて重要になります。国としても、これを法制度を通じて段階的に進めていこう、という考え方です。

ただし、企業ごとの課題は千差万別です。

考え方が古く、長時間労働を是認するような偏った組織風土の企業もあれば(こうした企業は成り立たなくなりつつあり、高齢化していることが多いですが)、多様化は進んでいるものの、あと一歩踏み出せない壁があったり、特定の点で従業員の不満が出やすかったりする場合もあります。

こうした各企業の多様な課題に「シューティング」していくような法政策が増えています。

ロボット・生成AIとの共存という最先端テーマ

人を増やせない、時間も増やせない、となった時に、どうやって生産性を向上させるか。その大きな一つの方策が、ロボットや生成AIといったテクノロジーとの共存です。

例えば、ファミレスに行くと配膳ロボットがいたり、注文がタブレット化されていたりしますよね。これにより、注文ミスや配膳ミスが減り、顧客は正確で迅速なサービスを受けやすくなっています。これは効率化の面で非常に有効です。

しかし、ここには新たな課題も潜んでいます。

テクノロジーによる効率化が進む一方で、働く側は「人よりロボットの方が評価されているのでは?」と感じ、働きがい(エンゲージメント)が低下してしまう可能性です。

建設現場でも、かつて人海戦術だったのが、今は自動で動く重機などロボットと数人で協力して建設を進める形に変化しています。多様な働き方の中には、間違いなく「ロボットと一緒に働く」という視点が含まれてきます。

ロボットとの共存が進むことで、メンタルヘルスの問題や、ロボットと働く人間の評価方法、管理上の特殊な問題なども出てくるでしょう。

これらは、多様性という大きな枠組みの中で整理されますが、真剣に考えていく必要がある論点です。人よりもロボットの方が生産性が高い場合、人間の働きをどう評価するのか。コストだけで比較すると難しい。

実は、iU組織研究機構の実践的な研究テーマの一つとして、この「人型ロボットとどう、ともに働いていくか」というテーマを設定しています。働くことに関する様々な課題の中でも、これはかなり先端的な領域です。

このテーマを考える上で重要なのは、ロボットや高度なAIは、人間とは全く異なる特性を持っているという認識です。

まずは、それらを「区分けして捉える」視点が必要です。そして同時に、テクノロジーが「人間を補完するものとして、人間とチームを組んで価値を創造できているか」という視点も重要です。

この「分割して捉える」ことと「協働を捉える」こと、どちらもしっかり見ていくことが、ロボット・AI時代の働き方を考える上での中心になるのではないか、と仮説を立てています。

テクノロジー導入を成功させる鍵は「全体最適」

テクノロジーの導入は進んでいますが、それを成功させるには工夫が必要です。

例えば、ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、生成AIとの協働がうまくいくかどうかは、チームの文化や成熟度に大きく左右されるという考察が出ています。

生成AIを組織にシームレスに導入する7つの戦略 従業員の技術力より組織文化に気を配る | テクノロジー|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
生成AI(人工知能)の普及が急速に進むいま、企業はその実用化について多くの期待と懸念を持っている。AIの効果的な展開は、技術力よりも、人間の適応力と文化的要因に大きく左右される。では、生成AIを組織…

人間同士の関係性がうまくいっていないチームにAIやロボットが入ると、かえってパフォーマンスが下がってしまうこともあるのです。

逆に、協力的なチームでは、テクノロジーが効果を劇的に高めます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の事例を見ても、仕事のやり方やプロセスを整理しないまま部分的にテクノロジーを導入しても、かえって問題が生じることが非常に多いです。

書類の回し方や手続きの方法といった「仕事の交通整理」をしないままテクノロジーを入れても、うまくいかない。これは、私も様々な企業を取材する中で痛感している点です。

組織全体や働き方全体を、ある程度きっちりと整理した上でテクノロジーが入っていくことによって、初めて効果が発揮され、業務効率化や生産性向上が達成されるのです。

生成AIの活用はまだ部分的な最適化にとどまっている企業が多く、経営全体に強く関わる段階には至っていません。これは、AIがまだパソコン上のシステムであり、リアルに存在する人間とは異なるという身体感覚が影響しているのかもしれません。

しかし、言葉を話すAIなどが人の形を持ち、独立して動くようになることで、私たちの働き方や世界観は大きく変わる可能性があります。これは非常に重要な変化だと考えています。

未来へ向けたiU組織研究機構からの発信

雇用領域は、これまで情報発信の種類に多様性が不足していた分野だったかもしれません。iU組織研究機構としては、この分野において、多様な視点から働き方に関する情報や可能性を発信していきたいと考えています。

労務、働き方、法令対応、そして働くことや経営に関わる最新のトレンドなど、幅広いテーマで発信を強化していきます。様々な企業の成功事例はもちろん、貴重な失敗事例も分析し、それを皆さんにお伝えすることで、失敗を避け、より良い組織や働き方、持続可能な組織、そして生産性向上とエンゲージメント向上を実現するためのお手伝いができればと考えています。

最後に

今回は、iU組織研究機構の研究テーマと、働き方を取り巻く劇的な変化、特に働き方改革の進化、人的資本経営、そしてテクノロジー(ロボット・生成AI)との共存といった最先端のテーマについて、ご紹介してきました。

これらの変化は、これからの私たちの働き方、そして企業のあり方を考える上で避けては通れません。持続可能な組織を作り、生産性やエンゲージメントを高めていくためには、変化を理解し、適切に対応していくことが不可欠です。

これからも、皆さんと一緒に未来の働き方を考えていけるような発信を続けていきたいと思います。iU組織研究機構について、詳しくは、こちらのウェブサイトをご覧下さい。

【公式】iU組織研究機構 雇用系シンクタンク・大学産学連携団体(正式名称:一般社団法人 情報経営イノベーション組織研究機構)
iU組織研究機構は雇用系シンクタンクです。人的資本&人権&IPO等先進領域の組織技術と雇用政策や法制度研究 外部連携と認証により、企業価値向上とスタートアップ企業の急成長を実現する情報経営イノベーション専門職大学(iU)との産学連携団体です...

コメント

タイトルとURLをコピーしました