「世の中のガジェットっていうのは、ほとんど見たことがない。でも、その中でもいいものがある」

2026年8月17日に開かれたメディア向け説明会で、矢崎飛鳥さんは新しい場の出発点をこう語りました。週刊アスキー、Engadget 日本版、TechnoEdgeなどでテックメディアを率いてきた矢崎さんは、店長兼キュレーターとして「&count(エンカウント)」に参加します。

その矢崎さんが、もうひとつ強調した言葉があります。

「物を売る場所ではありません」

&countは、世界のガジェットを並べるだけの店舗ではありません。知らない製品に触れ、仕事をし、人と話し、使った感想を作り手へ返す場所ですFastlane Japanが渋谷・表参道エリアに開設し、8月20日にグランドオープンします。

矢崎飛鳥さんが選ぶ基準は「まだ見たことがないガジェット」

&countという名前は、ロールプレイングゲームで敵やキャラクターに遭遇する「エンカウント」に由来します。ただし、ここで待っているのは戦闘ではなく、まだ知られていないテクノロジーとの出会いです。

矢崎さんは説明会で、深圳だけでもガジェットメーカーが2万5000社以上ある(政府公認の企業)とのFastlane側の調査を紹介しました。少なくとも、日本で触れられる製品はその一部にすぎないという問題意識が、&countの出発点になっています。

だから展示の基準は、売れ筋を集めることではありません。矢崎さんは「基本的には『見たことのないもの』にこだわっています」と説明しました。知名度よりも、触ったときに発見があるか。技術やデザインに、まだ言葉になっていない価値があるか。テックメディアと製品開発の両方に関わってきた経験を、空間の編集に使おうとしています。

Fastlaneは、海外ガジェットの日本進出を支える会社です

そもそもFastlaneは、ガジェットメーカーではありません。中国・深圳に拠点を置き、デジタルブランドの海外進出を支援する企業です。

Fastlaneのグローバルサイトでは、現地の消費者理解をもとに、ブランドマーケティング、ユーザー運営、EC、販売チャネルの構築までを一体で支援すると説明しています。欧州、米州、日本、韓国などで、ブランドごとの市場参入を現地化する役割です。

日本法人のFastlane Japanは2021年設立。海外製デジタル機器の正規代理店業務に加え、公式ECの運営、Amazonなどでの販売、家電量販店や通信キャリアを含むB2B販路の開拓、PR、物流、カスタマーサポートまでを扱います。Nothing、REDMAGIC、nubia、Hypershellなど、日本でも見かけるようになったブランドの展開に関わってきました。

つまりFastlaneの仕事は、製品を輸入して売るだけではありません。海外で生まれた製品が、日本の利用者にどう理解され、どこで売られ、購入後まで信頼を保てるか。その市場参入の一連の工程を設計する会社です。

ショールームが埋めるのは、オンライン販売の手前にある空白

では、販売支援を行うFastlaneが、なぜ物理的なショールームを持つのでしょうか。それはまだ知られていないブランドほど、スペック表と写真だけでは価値を伝えにくいからです。

装着感、質感、操作の癖、意外な用途は、実物に触れて初めてわかります。一方で、常設の売り場がなければ、利用者の率直な反応もメーカーへ戻りにくくなります。

&countでは、展示品を実際に手に取り、写真や動画を撮影できます。日本未上陸の製品や発売前の試作機が並ぶ場合もあり、来場者の感想を開発側へフィードバックする計画です。

ここから見えるのは、&countが販売店ではなく、海外製品の日本市場参入を試す実証拠点だということです。製品を見せて終わるのではなく、体験、発信、利用者の反応、メーカーの改善をつなぐ。

Fastlaneがオンラインと流通で担ってきた仕事に、対面の接点を加える狙いがあります。

100点以上を試し、そのまま仕事もできる

説明会時点では、100点を超える製品が用意されていました。AIデバイスやスマートウォッチなどのウェアラブル、イヤホンなどのオーディオ機器、スマートフォン、ゲーミング機器、スマート家電まで、カテゴリーは幅広くなっています。

Nothing、nubia、REDMAGIC、Plaud、XREAL、Rokid、RingConn、Timekettle、xToolなど、出展予定ブランドも多彩です。今後も製品とカテゴリーを順次増やすとしています。また、Keychronのキーボードがクラファンで大好評となったギズモードとの連携も展開されるそうです。

予約時には、スタッフのガイドを希望するか、自分のペースで見るかを選べます。矢崎さんが重視するのは「程よい距離感」。製品について詳しく聞きたい人には説明し、撮影や仕事に集中している人にはむやみに声をかけません。

無料Wi-Fiと電源を備えたフリースペースもあり、製品を試したあと、その場で撮影素材を整理したり、記事を書いたりできます。3Dプリンターやレーザーカッターも設置され、準備が整い次第、ものづくりに使える環境へ広げる計画も示されました。

目指すのは、ユーザーと作り手が交差するコミュニティ

&countのもう一つの柱が、コミュニティです。

想定しているのは、ガジェットファンだけでなく、ライターや映像制作者、ECに携わる人、日本のメーカー、海外ブランド、ものづくりをするクリエイターが集まり、互いの知識や反応を持ち寄る場を目指します。

メディアとの交流会、メーカーの小規模な発表会、クリエイターによる持ち込みイベントなども計画されています。会場利用については、予約を前提に、クリエイターへ無償で提供する考えも説明されました。

この構想が機能するかは、展示品の数だけでは判断できません。来場者の反応が製品改善につながるか。ここで知った製品が、記事や動画を通じて別の利用者へ届くか。メーカー同士、あるいはメーカーとクリエイターの協業が生まれるか。オープン後に見るべきなのは、来場者数よりも、ここから生まれる具体的な関係です。

矢崎さんの「物を売る場所ではない」という言葉は、販売を否定しているわけではありません。売る前に、まず理解されること。触った人の言葉で価値が見つかること。その積み重ねが、日本で長く使われる製品を育てます。

&countの試みは、8月20日に始まります。

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