iU大学の松村太郎研究室は、2024年12月から、「MID: メディア・イノベーション・デザイン」というプロジェクト名で、コンテンツやエコシステム、コミュニティのデザインと制作をテーマとする学生が集まってきました。
さまざまなコンテンツや作業ファイルを蓄積、供給、バックアップする大容量ストレージが必要となりました。
そこで、NAS(Network Attached Storage)に超入門することにしました。今回研究室に導入したのが、Synology NAS DiskStation DS223jでした。前述のNASに、6TB HDDを2台セットアップしています。
※Amazonでは、NAS本体とHDDのセット販売もあり、ガイドブックもおまけでついてきました。
今までのファイル共有やバックアップ
今まで、あまり複数の人でストレージを共有したことはなく、NASを買ったことはありませんでした。
また、物書きで大きなファイルといっても写真ぐらいだったこともあり、数TBクラスあれば、クラウドストレージサービスでのファイル共有(DropboxやGoogle DriveやBox)の方が便利だったという事情もあります。
フォルダ自体に共有権限を割り当てたり、ファイル単位で読み書きを許可したり、共有ディスクを設定したりと、コラボレーションを行う際には非常に手軽で、特にGoogle DriveとGoogleドキュメント/スライド/シートを使う場合、ブラウザからファイルを直接編集できる点が非常に大きいです。
メールやSlackで添付すると、送られてきたデータを編集することになるため、版が枝分かれして増えてしまう問題があります。クラウドストレージ上での編集は、同時編集対応も含めて生産性を高めてくれています。
それでも、ビデオや写真のバックアップのために、単体のHHDやSSDでストレージを拡張して、データを保存したり、バックアップを取ったりしていました。
好んで使っているのは、WDのカードサイズのSSD。2年に1度くらいのペースで、2TBずつ購入しています。
単体のストレージは、USBやThunderboltでコンピュータと直接接続し、OSにマウント(認識させ、アクセス可能な状態にする)して使用しますが、基本的にはそのコンピュータからしかアクセスできません。
そのため、別のコンピュータでストレージを使いたい場合は、物理的に接続し直す必要があります。逆に、自宅と大学研究室のマシンの間でデータを移動させたり、作業データを持ち歩いたりするときに便利です。
NAS超入門
ものすごく簡単に言えば、NASは、クラウドストレージサービスと直接接続するストレージの中間的な位置付け、と言えるかもしれません。
クラウドストレージの場合、お金を払えばほぼ無尽蔵なストレージが得られるスケーラビリティに加え、マルチデバイス・マルチユーザーからのアクセスが可能であり、Google Driveのようにアプリケーションとの組み合わせによる生産性向上への寄与が挙げられます。
他方、直接接続のストレージは、買い切りでサブスク料金がかからず、費用と容量のバランスが最も安価で、小型ストレージであれば持ち運び、ギガビット級の高速なデータ書き込みが可能です。
この2つのタイプのストレージの中間、いいとこ取りをしているのがNAS、と解釈しています。
ローカルに物理的に置かれており、USB接続やThunderbolt接続も可能なので、外部インターネット回線速度に左右されずアクセス可能である点。その一方で、コンピュータに属さず、独立してネットワーク上に接続され、複数の人による同時アクセスにも対応できる点が挙げられます。
価格についても、ハードディスクを複数台用いることから、クラウドやSSDより有利です。
年間12000円程度がかかり続ける2TBというクラウドストレージと、20000円で2TBのSSD、12000円で2TBのHDDが、それぞれ恒久的に占有可能な直接接続のポータブルストレージに対して、Synologyの前述のセットの場合、6TB×2で80000円ちょっとの価格でした。
NASを選ぶなら2ベイ以上?
今回、SynologyのコンパクトなNASを選択したのですが、2ベイと言われる製品を選びました。というのも、複数台のHDDを搭載できなければ、単なるポータブルHDDを買った方が良いんじゃないか、と考えたからです。
「ベイ」は、ストレージを格納するスペースのことで、選んだ製品では2台のストレージを格納できます。上のセットは6TBのHDDが2台セットでついてきました。
NASのセットアップの際に、この2台のHDDをどう運用するか?を考える必要があります。この運用の方法はRAID(レイド、Redundant Arrays of Inexpensive Disks)と言われています。
主要なモードは次の通り。
- RAID0:複数のストレージをまとめて、1つの巨大なボリュームとして認識させる方法。バックアップがないため、HDDが故障すると、データが復旧できなくなる。
- RAID1:1つのボリュームと同じ内容を、もう一つのボリュームに書き込んでバックアップを取る。
- RAID5:ボリューム1つ分の「パリティ」データを保存することで、いずれかのボリュームが呼称しても、パリティから失われたデータを生成できる仕組み。ボリュームが呼称しても動き続けるが、NASのCPUの負荷が高まる。
そのほかにも上記の組み合わせなどのモードを設定できます。
Synology NAS DS223jに対しては、当初RAID5にしようと思っていたのですが、一時的なデータの共有が多かったことから、RAID0にして12TBの容量を確保しました。
モダンなNASは、もはやLinuxサーバだった
目から鱗だったのは、現在のNASは、ちゃんとしたCPUとメモリとストレージが搭載されており、Linuxが動いているのが当たり前だ、ということ。
しかもGUI(Windows System)にブラウザからアクセスし、ファイル操作だけでなくNASそのものの設定にも対応する仕組みとなっていました。
Synology NASはMediatekのチップでLinuxが動いており、ファイルアクセスのプロトコルやVPNといったネットワーク関連だけでなく、WebサーバやWordPressのホスティングなど、意外なほどになんでもでき、ブラウザ内のUIを使って簡単に設定することができます。
初めて買ったとは言え、NASってこういうことになっていたのかーと。
まとめ
ということで、Synology NAS DS223jを研究室に導入し、共有ファイルサーバとしての運用を開始しました。現状、データの受け渡しや作業ファイルの保存など、狙い通りの用途で役立ち始めています。
NASというとちょっととっつきにくいかな、と思っていたのですが、前述のように多機能化しており、それをWindowsやMacみたいなマウス操作可能なGUIで設定できる点も手軽でした。
今後、外部環境からのアクセスなど、より円滑な運用方法や最適化について、考えていきたいと思います。
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