KDDIが、「Googleメッセージ」を、今後のAndroidデバイスの標準メッセージアプリとして採用することを発表しました。
これによって、Googleサービスとのスムーズな連携、Android端末上でのGoogle AI活用・連携の促進、そしてグローバル標準のRCS普及を促進させることなどを狙っています。
そもそも、RCSって?
Googleメッセージが扱うメッセージの仕組み「RCS」はRich Communication Servicesの略で、GSMAで国際標準化され、世界各国の通信会社や端末メーカーに採用されています。
これまでのSMS(Text)のように、電話番号で送受信しますが、より多くの文字数や写真・ビデオ・その他の添付ファイルの送付、グループメッセージ、既読・未読の通知に対応しています。
またSMSでは1通の送信につき3〜5円かかっていましたが、RCSはデータ通信を用いるため、「ギガ」を使って送受信ができ、送信後との料金を気にする必要はありません。
Googleメッセージが日本でスタート
今回のKDDIの発表は、Googleの開発者イベント「Google I/O 2024」での日本におけるGoogleメッセージ(Google Messages)の開始に合わせたものになります。
Googleメッセージは、SMSとRCSを扱うメッセージクライアントで、1:1のやり取りにおけるエンドtoエンド暗号化や、Googleサービスの埋め込みに対応するメッセージサービス。
例えば、相手が入力中に「…」が表示される機能や、チャットルームのカスタマイズ、返信やリアクションなどの機能が、電話番号でのメッセージのやり取りに追加されます。
ちょうどAppleのメッセージサービスであるiMessageに対応した標準メッセージアプリに近い実装になっていますが、最大の違いはGoogleメッセージにはウェブインターフェイスでの利用が可能なことも特長です。
多難な日本での展開
KDDIのAndroidデバイスで、Googleメッセージが搭載されることはとても喜ばしい話ではありますが、日本におけるいくつかの問題も存在しています。
「+メッセージ」とドコモ・ソフトバンクはどうするの?
実はRCSは、日本の携帯電話各社も活用しようとしてきた経緯があります。「+メッセージ」というアプリを用意し、日本におけるRCS普及を、携帯電話会社の壁を乗り越えて実現しようとしていました。ちなみに、iPhone向けのアプリも用意されました。
すでに4000万人が参加している(KDDIのリリース)という現状もありますが、RCSを受信した、日常的なやり取りに使っている、と言う人をまわりで見つけるのはなかなか難しいのではないでしょうか。
それもそのはず、RSCアプリが入っていて、電話番号があれば使うことができるため、LINEのようなアカウント登録が不要な点も、RCSの特長なのですが、裏を返せば、使っていても使っていなくても、「RSC対応」は成立するわけで、じゃあ毎日使っている人はどれくらいいるんだろう?という部分が問題になります。
また、これまでドコモやソフトバンクも「+メッセージ」で日本におけるRCS普及を目指しており、KDDIもこの輪から抜ける必要はないわけですが、他のキャリアがどのように動くのかはまだわかりません。
RCSはRCSで、Googleメッセージだろうか+メッセージだろうが、相互のやり取りは可能なはずですが、対応する機能に差が出てくるとなると、ユーザーからすれば「よく分からない」「これができない」という結果を生みそうです。
LINEから乗り換えを促すのは厳しい
皆さんの肌感覚の通り、日本のメッセージアプリの派遣は引き続きLINEが握っており、Googleメッセージは、+メッセージと同様、LINEの牙城をいかに崩すか?というチャレンジを強いられることになります。
LINEの月間ユーザー数9500万人(2023年6月)。しかも、SNSとしてLINEのみを使っているユーザーは41.2%にも上ります。
アカウント登録が不要である点は確かにメリットと言えますが、すでにLINEのアカウントを持っているのであれば、まわりに使っている人がいないRCSへの乗り換えを訴えるのは無理があるのではないでしょうか。
これは「ネットワークの外部性」と言われるもので、相手がいなければメッセージアプリが成立できない特性を表しています。
現段階で、iPhoneは非対応
もう一つの問題は、日本でAndroidとシェアを二分しているAppleのiPhoneが、標準メッセージアプリでRCSをサポートしていない、という問題です。
RCS自体は標準規格となっていますが、Appleにはこれと直接競合するiMessageを有しており、セキュリティレベルを落としたくないとの理由から、RCSを標準的に採用することは避けてきた経緯があります。
電話番号でのメッセージングが盛んな米国の風景を見てみると、iMessageは若者の囲い込みの手段になっています。
iMessageはブルーの噴き出しで送信され、SMS料金がかからず、グループのやり取りができ、リッチなコンテンツのシェアにも対応する印となります。しかしAndroidユーザーの電話番号がグループに含まれていると、その人には単体のSMSとして送信されてしまい、グループでのやり取りが継続できなくなります。
SMS送信に対して、iPhoneのメッセージアプリでは青ではなく緑の噴き出しになることから、「Green Bubble」と揶揄されるという話題がしばしば上がってきていました。
ほぼ半数のユーザーがGoogleメッセージを用いたRCSに対応しないのであれば、使っているデバイスによる分断がないLINEが引き続き使われる未来しか待っておらず、どのような普及戦略を持っているのかは不透明と言えます。
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