春夏秋冬通して、電気代の支払いが基本料金含めて2500円、ローンを含めても、毎月2万円で一定……。なんて聞いたら、とても魅力的ではないでしょうか。
電気代をはじめとしたエネルギーコストの高騰や、災害対策など、自家発電と蓄電は、ライフラインの1つである電気のリスク回避に絶大な威力を発揮します。
その一方で、「訪問販売でとっつきにくい」「悪い印象を持ってしまう」「よく理解しないまま契約が進んでいってしまう」といった不安や、「手続きが煩雑でわかりにくい」というユーザー体験の問題点がありました。
Ankerは、この領域に切り込んで、ユーザー中心での差別化を作り出そうとしています。
Anker、意外性のある「完全な新規参入」
Ankerはこれまで、Amazonや自社の通販、家電量販店と行ったチャネルで扱うバッテリーを中心とした周辺機器を扱ってきました。その点で、2025年1月29日の発表会は、まったくの新規カテゴリとビジネスモデルへの参入となりました。
その点で、意外性の大きな新規参入、と受け止めています。
レポートのYouTubeビデオでご紹介しています。アンカー・ジャパン株式会社代表取締役CEO、猿渡歩さんへの単独インタビューも、こちらからどうぞ。
Anker SOLIX XJシリーズとは

今回の新製品は、リン酸鉄バッテリーと家庭用蓄電池、これに組み合わせるパワーコンディショナーが核となっています。また、両面ガラスパッケージで耐食性を高めたソーラーパネル製品も組み合わせることができるとのことです。
バッテリーユニットは、5000Whを1単位として、2つで10000Wh、3つ15000Whまでスタックすることができます。家族構成や、予算、屋根に載せられる太陽光パネルの出力で、比較的細かく構成をカスタマイズできます。

製品は非常に薄い点が特徴で、家屋と壁の隙間が小さい場所でも、邪魔にならず設置できる可能性が高いのではないか、と思いました。
「ニーズはすごくある」

Ankerの猿渡CEOに話を聞くと、「ニーズはすごくある」と新規参入の動機を語っていました。
「私たちはモバイルバッテリーや充電器と小型のものに取り組んできました。またポータブル電源市場も今拡大をしていく中で、さらに我々としてできるものは何か?
そこで家庭用蓄電池に目を当てました。特に最近の災害とか電気代の高騰もあるので、ニーズはすごくあります」(猿渡さん)
しかし、そのニーズの高まりに対して、今家を持ち始めている子育て世代や、犯罪リスクから、太陽光蓄電池システムの販売手法のメインである「訪問販売」という形態がマッチしてない、という問題がある点に着目しました。
そこでアンカーは、オンラインで相談から手続き、設置までが完了するワンストップの手続きを実現し、ここを強みとして売り込んでいく計画です。販売目標などは、非公表でした。
現太陽光発電+蓄電ユーザーの視点での評価
今回のAnker SOLIX XJシリーズは、リン酸鉄で100%充電での運用でも劣化が少ない点、日本向けの高温多湿対策、防食対策と、市場の自然環境にフィットさせている点など、これまでのグローバル展開が基本のAnkerらしからぬ日本仕様が目立つ製品でした。
また、薄型化されている点や、電池の容量の組み合わせがカスタマイズしやすい点などがポイントと言えます。
しかし気になったのは、電池の入出力の仕様です。
- 蓄電池ユニット1つの5000Wh構成の場合、入出力は最大1500W。
- 蓄電池ユニット2つの10000Wh構成の場合、入出力は最大3000W。
- 蓄電池ユニット3つの15000Wh構成の場合、入出力は最大4500W。
つまり蓄電池ユニットの個数で、最大出力が決まってくる、という仕組みになってるのです。
普段太陽光発電と蓄電池の組み合わせを使う経験上、この最大出力の仕様は「心許ない」という評価です。
蓄電池ユニットの仕様は改善すべき
例えば、夏休み。普通に電気を使いながら、2部屋でエアコンをつけようとすると、5000Wh構成でも10000Wh構成でも、出力が足りません。
つまり、電池に残量があっても、蓄電池の出力を超える部分を買電しなければならなくなるため、蓄電池だけで運用するコストメリットが薄れてしまうことになります。
屋根に載せる際にポピュラーな4000〜5000Whクラスの太陽光パネルの発電を生かそうとすると、蓄電池ユニット3つの仕様を一択となってしまい、カスタマイズ性や柔軟なコストメリットを活かすことができません。
詳しく聞いてみると、パワーコンディショナーは、4950Wまで対応しているそうです。国内メーカーのパワコンに比べるとやや劣っていますが、それ以上に問題なのは蓄電池の入出力仕様だということがわかりました。
現在の仕様だと、蓄電池5000Whあたり入出力最大1500Wとなっていますが、蓄電池5000Whあたり入出力最大5000Wに高められれば、国内メーカーの製品に使い勝手の面でも肩を並べることができるのではないか、と思いました。
今後、そうした改善も進めていくとのことです。
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