愛用しているMarkdownエディタ兼執筆ワークステーション「Ulysses」が、Siri AIとの連携を進めています。順調に開発が進めば、Appleの新しいOSやデバイスに合わせて、2026年9月に正式提供される予定です。
今回の対応で重要なのは、AIに文章を書かせることではありません。
Siri AI対応の価値は、書く前後にある小さな操作の摩擦を減らすことに取り組んでいました。
この辺りは、既存のアプリがAIによってどのように進化させ、顧客満足度を高めるか?という一つのサンプルとして、実体験を持ってトラックしていきたい部分です。
Siriは文章より先に、執筆ワークスペースを理解する
Ulyssesの説明によると、Siriから次のような操作が可能になります。
- 新しいシートの作成や移動
- お気に入りへの登録
- シートやグループの確認
- 特定シートを開く操作
- 検索
- シートやグループの書き出し
現在開いている文章に対しては、校正、要約、ファクトチェックなども依頼できます。
これらは派手な文章生成機能ではありません。しかし長くUlyssesを使っていると、執筆以外にも、過去の原稿を探す、企画ごとに移動する、公開用に書き出すといった操作が繰り返し発生します。
AIがこの情報構造を理解すれば、書き手はアプリを操作する時間を減らし、文章へ戻りやすくなります。
とくにiPhoneやiPadでは、メニューを何段階もたどる代わりに、やりたいことを言葉で指示できる意味は大きそうです。
一方、Macでショートカットに慣れている利用者にとっては、必ずしもSiriの方が速いとは限りません。この辺りは、普段のUlyssesとの付き合い方に応じて、という部分に左右されそうです。
「何でも書くAI」にしない制限も重要
現段階では、高度な文章編集や生成コンテンツの作成には対応しません。編集できるのは開いているシートに限られ、SiriはUlysses独自のマークアップもほとんど理解していないとされています。
これは機能上の弱点です。同時に、UlyssesがAI文章生成アプリへ急いで変身せず、執筆環境としての静けさを守っているとも受け取れます。
文章の構成や表現までAIに任せるのか。それとも、書き手が考えるための場所を保ちながら、検索や整理、書き出しだけをAIに任せるのか。
Ulyssesは、まず後者から始めます。
オンデバイスAIは、生成量ではなく中断回数の少なさによる評価したい
今回のニュースレターには、どの処理が端末内で完結し、どの処理で外部のAIサービスを使うのかは書かれていません。プライバシー、オフライン時の利用、応答速度については、正式版で確認すべきポイントです。
また、生産性を測る際にも「何文字生成できたか」だけを見ない方がよいでしょう。
探す時間が減ったか。文章を移動するために思考を中断しなくなったか。書き出し形式を考える手間が減ったか。AIの操作によってMarkdownの構造が壊れず、簡単に取り消せるか。
このあたりが、テキストエディタとOS統合AIの相性を決めます。
UlyssesのSiri AI対応は、AIが文章の主役になる更新ではありません。Appleデバイスが、書き手のワークスペースを少しずつ理解し始める更新です。
良い執筆AIは、代わりに書く量ではなく、書き手が文章へ戻るまでの時間を短くします。
出典: Ulysses Inside, July 23, 2026, Vol. 7(Ulyssesから配信されたニュースレター)