各大学で、AIに関する方針が出されている中で、iU大学は昨年、中村伊知哉学長から、こんなAIに関する大学の指針が出されました。
iU大学では、AIを積極的に活用するように。以上。
これに基づいて、現在AIタスクフォースでは、学内のAI利用についての取りまとめをしています。授業、研究、事務の全領域でAIを活用していくこと。そして中には、日本初となる試みも議論されています。
実際、学生は授業中に、常にAIを側に置いて、議論や実習を行っています。今年の6月30日までの登録で学生は15ヶ月無料となるGoogle AI Proの普及率が最も高いのですが、中には
飲み会を月に1度キャンセルしてChatGPTやClaudeの3000円のプランを契約する
という学生も少なくありません。
Z世代が考える、AI時代に生き残れる人材であろう5類系

そうした中で、AIを使い倒すZ世代、大学4年生に、「AI時代に生き残れる人材とは、どんな人たちか?」という議論をしてもらいました。それが、冒頭に挙げた5つの累計でした。
- 交渉人:人と人のコミュニケーションができる人。
- 発明人:アイデアが作れる人。AIが学習していない新結合が作れる人。
- 設計人:まだ存在していない何かが作れる人。その場の条件に合わせた創造が可能な人。アーキテクト、創造主。
- 身体人:身体性のある特技がある人(スポーツ・伝統芸能・職人)。
- 知識人:教養の引き出しがたくさんある人。(AIの出力が正しいか、判断できる人)
学生が考える、現段階のAIでは代替が難しいタイプの人材、Z世代がつまり目指すべきだと考えた人材タイプ、ということになります。
これらについて、議論の結果をまとめていきます。
交渉人(Negotiator)
交渉人とは、高度な対人コミュニケーション能力を活かして折衝・調整・説得を行う人材です。顧客や取引先との交渉、チーム内の意見調整、リーダーシップ発揮など、人と人の間で合意形成や関係構築を担います。
類型の定義と重要性(AIでは代替困難な点)
社会的スキル(他者の反応を洞察する力、交渉力、協調・調整力)は、単純な知的作業以上にAIによる代替が難しい領域とされています。
特に感情の読み取りや信頼関係の醸成、創造的な妥協策の模索などは、人間ならではの能力です。
実際、日本企業の新卒採用では16年連続で「コミュニケーション能力」が重視項目の第1位となっており、AI時代においても人間的な交渉・対人スキルの重要性は増しています。
発明人(Inventor)
発明人とは、新しいアイデアや価値を創出する創造的思考に秀でた人材です。
研究開発や商品企画、アーティスト・デザイナーなど、ゼロからイチを生み出す役割を担います。AIの生成能力が進歩したとはいえ、「真に独創的な発想」や「未知の課題への柔軟なアプローチ」は依然として人間の領域です。
類型の定義と重要性(AIでは代替困難な点)
AIは大量の既存データからパターンを学習しますが、前例のない発明や文脈に根ざした創作には、人間の好奇心・直観・洞察が不可欠です。
実際、AIが文章や画像をそれなりに生成できる現在でも、人間が生み出す作品には独自の個性や感情、文化的文脈が反映される点で優位性があります。
専門家も「人間の創造性は今なお代替不可能」であり、高品質で心に響くアウトプットには人間の独創性や微妙なニュアンスへの感性が欠かせないと指摘しています。
AI時代において発明人型の人材は、新規事業創出やイノベーションの原動力として代替困難かつ重要な存在となっています。
そうした人材が活躍できる環境、つまり心理的安全性の低い組織の醸成もまた、発明人の活躍を後押しすることになります。
企業は、採用段階では「この人と一緒に新しいものを生み出せるか」という視点で多面的評価を行い、AIには生み出せないオリジナルな価値を創造できる人材を選抜することが重要です。
設計人(Designer)
設計人とは、ユーザーや社会のニーズを汲み取り、製品・サービス・制度などを構想し設計できる人材を指します。エンジニアリング設計者、プロダクトデザイナー、建築家、サービスデザイナーなどが該当し、課題発見から解決策の具体化までをリードする役割です。
類型の定義と重要性(AIでは代替困難な点)
その本質はデザイン思考(人間中心の発想法)にあり、技術やデータを活用しつつも常に「人」を中心に据えて新たな価値を生み出す点に特徴があります。
AI時代において、最新テクノロジーを単に導入するだけではなく、それを人々にとって有用で魅力的な形に落とし込む発想がますます重要となっています。
シリコンバレーでは「ユーザー体験をデザインできる人材」が重視されており、AI時代だからこそ人間を中心に考えるデザイナーの思考法が競争力の源泉になるとされています。
経済産業省・特許庁も2018年に「デザイン経営宣言」を発表し、デザインを企業価値向上の経営資源とすることを提唱しました。これはデザイン人材の重要性を国レベルでも認識している証左です。
AIは設計支援ツールとして図面作成や最適化提案を行えますが、ユーザーの潜在ニーズを洞察し真に望まれるコンセプトを打ち立てる部分は人間にしか担えません。
例えばAIが過去データから設計した製品があっても、それがお客様の心を動かすかどうか、文化や文脈に適合するかの判断はデザイナーの共感力・倫理観に基づく判断が必要です。
人間中心設計の専門家は「商品やサービスを使うのは結局人間。技術ありきでは劇的イノベーションは起きない」と強調しており、どんなに高度な技術でも「人の役に立ちたい」「生活を豊かにしたい」という発想が出発点になければ世に求められないと指摘しています。
このように、技術と人間とをつなぐ架け橋として設計人は不可欠であり、AIでは置き換えにくいクリエイティブかつ社会的価値の高い人材類型です。
デザイン思考型の人材を採用する際には、専門スキルと同時に共感力・問題発見力などの潜在能力を見極める必要があります。
身体人(Physical Worker)
身体人とは、人間の身体的能力や五感・巧緻性を駆使して価値を生み出す人材です。熟練工や職人、看護師や介護士、アスリート、現場作業員、サービス業従事者など、身体を張った労働や繊細な手作業、対面でのサービス提供を担う職種が該当します。
類型の定義と重要性(AIでは代替困難な点)
AIやロボット技術が進歩しても、現場特有の複雑な状況への臨機応変な対応や、長年の経験に裏打ちされた勘と熟練の技は依然として人間に頼らざるを得ない場面が多くあります。
例えば建設現場での狭所作業の工夫、製造ラインでの微妙な調整、物流での突発的トラブル対応などは、人間の判断力が不可欠です。
また医療・介護においても、AIは診断補助やデータ分析で威力を発揮しますが、患者への共感やきめ細かなケアは人間にしかできません。
医師・看護師・理学療法士といった専門職は高度な知識に加えコミュニケーション能力や実践的スキルが要求されるため、AI代替が難しい職種と言われます。
さらに、料理人やアーティストのように身体的感覚やセンスを伴う創作も人間ならではの領域です。
シェフは食材の僅かな状態変化を五感で感じ取り、美味を生み出す創造的調理を行います。AIが調理プロセスを効率化することはあっても、独自の味や盛り付け、美的感覚の微調整は人間の技術と言えます。
スポーツコーチも、AI分析では補えない選手のメンタル面のケアや士気向上の役割を担っています。加えて、保育士や介護士など人の心身に寄り添うケア職も、共感力と身体的ケアを組み合わせる仕事であり、AIには代替しにくいとされています。
人間の身体性や感性を活かす仕事はAI時代でも需要が高く、その役割は依然重要です。野村総研の研究でも「身体や感情に関わる仕事、創造性が求められる仕事はAIに奪われにくい」と分析されており、身体人型の人材は今後も不可欠な存在と言えます。
身体人は「実技+人物」の両面評価が鍵となります。技能テストやシミュレーションで即戦力度を測りつつ、面接や適性検査で成長意欲や協調性を確認するという二段構えです。
AIでは置き換えにくい繊細な技やホスピタリティ精神を持つ人材を確保するため、企業は現場見学やインターンシップを通じてミスマッチを防ぎつつ、人間らしい温かみと技能を兼ね備えた人材を見極めようとしています。
知識人(Knowledge Worker / Intellectual)
知識人とは、専門分野の深い知識と洞察力によって付加価値を生む人材です。研究者・学者、戦略コンサルタント、データサイエンティスト、法律・医療などの専門職、あるいは高度な分析や企画を行うホワイトカラー人材がこれに当たります。
類型の定義と重要性(AIでは代替困難な点)
AI時代には大量の情報処理や定型分析はAIが担う一方で、高度な判断や批判的思考、複雑な問題解決は引き続き人間に委ねられます。特に専門領域における深い知識の体系化や、新たな仮説構築には人間の創造的思考が不可欠です。
例えばAIが論文やデータを網羅的にリサーチしても、そこから「何が課題で次に何を解くべきか」を見極め、新たな研究仮説を立てるのは研究者自身の直観と経験の賜物です。
実際、ノーベル賞級の発見はデータから自動的に出てきたのではなく、研究者の長年の洞察の積み重ねと偶然のひらめきによるものであり、こうした「気づき」や「洞察力」はAIには再現困難といえます。
また知識人には、単なる知識量以上に批判的思考力と倫理判断力が求められます。
AIは与えられたデータ内で最適解を出すことは得意ですが、その前提や文脈に妥当性があるか、あるいはデータに現れない背景事情を考慮するといった判断は人間の責務です。
例えば法律分野では、AIが過去判例を要約提示しても、個別事案の微妙なニュアンスや社会的影響を踏まえた主張構築や交渉は弁護士の役割です。
企業経営においても、AIの分析結果をもとに最終的な意思決定を下すのは経営者であり、その際にはデータには現れないリスクや人間的・倫理的観点での判断が欠かせません。
ビジネスリサーチラボの対談でも、「テクノロジーが進化するほど専門家には知識の深さと批判的思考が一層重要になる」と指摘されており、AIに依存しすぎることで失われかねない専門性の本質(文脈を読み解き本質を見抜く力)を磨き続ける必要性が強調されています。
知識人型の人材は高度専門性+批判的思考によってAIを使いこなし、あるいはAIにはできない領域で価値を発揮する存在です。
AI時代の情報過多な社会では、玉石混交のデータから意味を読み取り将来を構想する知のナビゲーターとして知識人の重要性が増すと考えられます。
つまり、「AIに回答させて終わり」ではなく「AIの回答を問い直し、より深い疑問を導く」という学習姿勢が専門家の卵には求められます。
専門知識(Depth of Knowledge)×思考力・学習力(Critical Thinking & Learning Agility)×倫理観・人間性というマトリクスで総合評価する視点が求められます。
次のステップ:勉強を続けることの重要性
おそらくここで上がってきた5類型は、現在のAIの技術と活用の経験から出てきたものです。
基本的には、専門的なスキルやAIにはソフト的に、ハード的に(まだ)困難であるという部分にフォーカスが当たっているように思います。
ただ個人的には「知識人」というのが異質です。
AIは膨大な情報を抱え込んでおり、人間の記憶力を遥かに凌駕しています。しかしそれでも、人に知識を求める、というのは矛盾しているように思うかもしれません。
しかしここが、Z世代のAIを使いこなしているiU学生のユニークな視点でした。
AIが出してきた結果の良し悪しを判断できるかどうかは、結局自分に知識があるかどうか、経験があるかどうかに作用されることを理解している結果です。
つまり、勉強を辞めてしまっては、AI時代についていけない、という本質に気づいていたということです。この気づきは、個人的にも、学生にとっても、とても大きな、学ぶことにより意欲をもたらしてくれます。
皆さんは、これらについて、どのようにお考えでしょうか。ぜひSNSなどで、フィードバックいただけますと幸いです。



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