大学の授業でも積極的にAIを学びのアシスタントとして、活用していますが、その中で学生たちはプロンプト(AIへの指示出し)の試行錯誤を続けています。
一方、生成AIのツールやモデルも進化を続けていて、「どのように指示を出したら良いのか?」という部分については、つねにアップデートしていかなければ、最適・最速で結果を得られなくなっていきます。
ChatGPT 5.1 Prompting Guideを読み解く
今回、Open AIはChatGPT 5.1をリリースし、これにまつわるプロンプトの書き方に関する専門的なガイドを公開しました。
このガイドは、プロンプトの書き方ガイドではなく、
長時間走るエージェントやコーディング支援ツールを作るときに、
• どうプロンプトを書けばよいか
• どうツールを定義すればよいか
• どう振る舞いをチューニングすればよいか
をかなり細かく実例つきで整理しているものです。
ただ、これをうまく読み解いていけば、普段ChatGPTを使うときに、「本当に仕事のパートナーになるツール」として活用できるようになるのではないか、と思いました。
そこで、これまでのモデルの変化と“味付け”を振り返りながら、OpenAIが最新モデル5.1向けに示している「うまい指示の出し方」を、整理してみます。
モデルの進化は「万能化」から「制御しやすさ」へ
GPTシリーズは、世代ごとに大きく三つの軸で変化してきました。
- 「できることの幅」
GPT-4の頃からテキストに加えて画像、音声などが扱えるようになり、「とりあえず聞いてみれば何でも返ってくる」感覚が強くなりました。ニュースの要約もコードの修正も旅行プランも、1つの窓口で済んでしまう。ここでは“万能感”が売りでした。 - 「思考の深さと一貫性」
世代が進むにつれて、単なる文章生成ではなく、推論や構造化がかなりまともになってきました。論点を整理してから結論を書く、前提条件を確認する、制約を守る、といったことがかなり自然にできるようになっています。 - 「制御しやすさ」
ユーザー側が、「どんな役割で振る舞ってほしいか」「どんな口調・トーンで話してほしいか」「どのくらい深く考えてほしいか(速さ重視か、熟考か)」といった条件を細かく指定したときに、その意図をちゃんと汲んだ応答が返ってきやすくなっています。
モデル側の変化は、「何でもできる」から「どう使うかを前提に設計された」へ、という方向にシフトしているわけです。そのぶん、こちらの指示の質も問われるようになりました。
GPT 5.1が前提にしている「プロンプト」の姿
GPT 5.1向けのガイドを読むと、「こう書け」と具体的に言っているというよりも、「こういう前提で設計しているので、こう指示すると噛み合います」というアイデアが見えてきます。
大きく言うと、「モデルをどう活かすか」を前提としながら、「仕事の段取りをどう一緒に組むか」という2点を意識していくと良さそうです。
役割と目的を最初に宣言する
最初のポイントは、「あなたは何者として、何のために、この会話に参加しているのか」を、冒頭で明確にしておくことです。
たとえば、
- 「あなたはテック系ジャーナリストです。〇〇というニュースについて、背景も含めて読者に分かりやすく解説してください」
- 「あなたは大学教員として、レポートを添削します。学生の視点を尊重しつつ、論理の甘い部分を指摘してください」
といった具合に、「役割+目的」をワンセットで渡す。
これは以前のモデルでも効いていましたが、GPT 5.1では、この最初の一言の影響が以前よりも大きい印象があります。逆に言うと、ここが曖昧だと、「まあ無難だけど、どこかピントがぼやけた」応答になりがちです。
指示は一番上に、素材はその下に
もう一つ、構造の話があります。
- 先に「やってほしいこと・守ってほしい条件」を書き、
- その下に「参考資料や前提情報」をまとめて置く。
この順番をはっきりさせると、モデルの理解が安定します。
これは、日本語と英語の文章の作り方、構造の違いもあるかもしれませんが、まずやることを示し、前提条件や資料をあとに置く方が良い、というのは、基本的なプロンプトの在り方だと思います。
確かに、生成AIに、とっちかった情報をまとめてもらう、という役割を任せたい気持ちも多聞にあるのですが、それはそれで、結構モデル側から見ると、「しんどい要求」になってしまっているようです。
トーンと形式まで含めた「味付け」の指定
GPT 5.1の特徴として、「味付け」に関するコントロールがだいぶ効くようなった、という部分が変化として挙げられます。ここをうまく活用したいですよね。
たとえば、同じ内容を説明するとしても、
- 友達に話すようにラフに
- 経営者向けに要点だけ簡潔に
- 高校生向けに専門用語を避けて
といった指定をきちんと書けば、雰囲気の違う文章が返ってきます。
ここで大事なのは、「抽象的な形容詞だけで済ませない」ことです。
「やさしく」「面白く」「エモく」と書くだけでは解釈が広すぎるので、
- 「高校1年生でも分かるように」
- 「ニュースサイトに載る解説記事として」
- 「講演のスライド原稿にそのまま使えるように」
のように、想定読者や用途まで含めて指定したほうが、こちらのイメージに近づきます。
ターゲットや用途を明確にする、という部分は、ChatGPTに限らず、出てきた結果が「これで良いのか?」を自分が判断する上でも重要な材料になるので、
形式も同様です。
- 「見出し付きで長文で」
- 「最初に要約、そのあとに詳しい解説」
- 「最後に3つのポイントとしてまとめる」
といった段取りを入れておくと、後処理の手間が減ります。
複雑な仕事は「段階に分けて」頼む
プロンプトガイドの中で個人的に一番納得感があったのが、「難しい仕事ほど、一度に全部やらせない」という発想です。
たとえば「生成AIと著作権についてレポートを書いて」とだけ投げると、
- ファクトチェックが甘い
- 論点の抜け漏れがある
- こちらが気にしている観点が入っていない
といったズレが起きやすくなります。
一方で、
- まずは論点の洗い出しだけを頼む
- その中から重要なものをこちらで選ぶ
- 選んだ論点ごとに、構成案を作ってもらう
- そのうえで本文を書いてもらう
というように、仕事を段階に分けて頼むと、精度や納得感が上がります。
GPT 5.1は、こうした「一緒に段取りを組む」使い方を前提にしている節があります。
コンテキストは「必要なものだけ、はっきりと」
もう一つ、プロンプトガイドで繰り返し強調されているのが「コンテキストの設計」です。
- 関係のある情報
- 最新の前提条件
- 守るべき制約
これらをコンパクトにまとめて渡すことが、良い出力への近道となります。
逆に、関係ない資料や、古い前提、こちらの頭の中にしかない条件を曖昧にしたまま投げると、「それっぽいけれどどこかズレた文章」が出てきます。
ここは人間同士のコミュニケーションとほとんど同じで、「何を共有しているか」を揃える作業と言えます。
GPT 5.1のようなモデルは、コンテキストをかなり長く受け取れますが、「長ければ長いほど良い」わけではなく、「要点がはっきりしているかどうか」が効いてきます。
フィードバックを前提にした「会話」として使う
そして最後に、ガイド全体を通して感じるのは、「一発で完璧を出す前提では設計されていない」ということです。
- 最初の出力を叩き台と捉え、
- 足りない視点やミスをこちらが指摘し、
- それを踏まえて改善版を作ってもらう。
この往復を前提にしているからこそ、GPT 5.1側には「指摘に素直に応じて修正する」「前のやりとりの意図を引き継ぐ」といった振る舞いが組み込まれています。
人間の同僚や編集者と仕事をするときと同じ感覚で、「まずは出してもらい、こちらも責任を持ってフィードバックする」。
そのサイクルを回すことで、モデルの賢さが初めて生きてきます。
これからの「プロンプト力」は何になるのか
GPT 5.1のプロンプトガイドを改めて読み直してみると、結局のところ、
- 目的をはっきりさせる力
- コンテキストを設計する力
- 段取りを組む力
- 相手の出力にフィードバックする力
といった、人間側の「編集能力」や「ファシリテーション能力」が前提になっていることが分かります。
角度を変えてみると、これまで以上に、人に指示を出すのがうまい人、チームワークがうまい人と、AIから良い結果が得られる人が一致してきた、と言うことができるかもしれません。
またモデルが進化するほど、「何を聞けばいいか分からない人」と「うまく聞ける人」の差は広がっていきます。
これまでは「プロンプト力」は、AI時代の新しいリテラシーでした。しかし、ChatGPT 5.1のガイドを見ていくと、AI以前から既に必要だった編集力・構成力が、少し姿を変えて可視化された、と言うべきでしょう。



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