iUでの最後の1年を始めるにあたり、このラボについての連載を記しておこうと思います。記録していきます
7年間、大学という場で、学生とともに学び、企業や地域と実践を重ね、さまざまなプロジェクトに取り組んできました。振り返れば、それは単なる授業や研究にとどまらず、「大学の中にありながら、社会と接続するための実装の場」をどう作るか、という挑戦でもありました。
その中心にあったのが、MID Lab.です。
MID Lab.の名前の由来
学長より、○○研究室(○○は人の名前)は禁止だ!名前を付けろ!ということで「Media Innovation Design Lab.」としました。Mediaに含まれる「MID」という言葉が頭文字になるように、あいうえお作文でやろうとしていることを表現したネーミングでした。
ただ、読んで字のごとく、MediaでInnovationをDesignする、MediaのInnovationをDesignする、ということで、メディアそのものについて探求したり、メディアを用いてイノベーションを加速させたりするハブになることを目指すものでした。
MID Lab.は「授業の外」にある、実装の場でした
MID Lab.は、Media Innovation Design Lab.の名前の通り、メディア、イノベーション、デザインを横断しながら、社会に向けた実践を行う場として動いてきました。
大学には授業があります。シラバスがあり、単位があり、成績があります。もちろんそれは大切です。しかし、社会で本当に問われるのは、答えが用意されていない状況で、問いを立て、関係者を巻き込み、形にしていく力です。
企業との共同研究やイベント、地域との連携、調査レポート、配信やメディア制作、学生の起業支援、新しい概念やフレームワークの実験。そうした活動は、教室だけでは完結しません。だからこそ、MID Lab.は「学ぶ場所」であると同時に、「試す場所」「つくる場所」「社会につなぐ場所」でもありました。
授業としてのMID Lab.
大学の醍醐味の一つはゼミ講義であり、iUでも3年の後期の後半と4年の1年間、ゼミの講義が設定されていました。名前の通り、メディアで、もしくはメディアの、イノベーションをデザインすると言うコンセプトで取り組みたいという学生を受け入れてきました。
ただ、大学の学部のゼミではありますが、教員の手伝いやゼミ全体の共通テーマを持つのではなく、卒論テーマは個人で設定することとしています。その方が、私が面白いから、と言うこともあるのですが。
メディアという根っこが共通するテーマは多岐に渡っていて、学生たちもそれぞれに興味を持っている。それぞれが掘り下げるテーマを、毎週ゼミの場に持ってきて披露することで、アイデアや知識、考えがミックスされ、お互いに学びになり、また発表者は別の角度からの意見や視点を取り入れられ、知見が深まる。
「話題提供」と名付けられたセッションを通じて、集合天才的な場を設定してきました。
意外と論文に着地する
iUでは卒業制作のフォーマットとして、卒論に加え、ビジネスプラン、作品制作の3パターンを選ぶことができます。そのため、当初はビジネスプランや作品の方向で進めようと計画する人が多かったのです。
しかし最終的には論文で提出する人が多かったのも面白い変化でした。色々と突き詰めていくうちに、論文に仕上がっていくという経験をする4年生がとても多かった。もちろんビジネスモデルを提案して、それを実際に事業として実践して、iUで一番投資を多く集める企業に成長している会社もうちのゼミから出ましたが、毎度卒論は面白い、がうちのゼミの売りになりました。
第1回(2024年1月)、第2回(2025年1月)、第3回(2026年1月)と、YouTubeに卒論発表会のアーカイブが残っていますので、ぜひお時間があるときにご覧になってください。



プロジェクトを通じて、学生は社会とつながる
MID Lab.で行ってきたことは、多岐にわたります。
IPビジネスやコミュニティ設計を考える取り組み。
AI時代の人材育成や、デジタルフルーエント人材のあり方を探る研究。
地方におけるイノベーション拠点づくりの対話。
企業や自治体との共創。
メディアを使って社会に伝えるための発信。
学生や卒業生のプロジェクト、スタートアップの伴走。
重要なのは、これらが「大学の看板を使った活動」ではなく、学生にとって実際の学びになっていたことです。
企業の方に話を聞き、課題を理解し、企画書を書く。イベントを設計し、運営し、発信する。レポートをまとめ、対外的に説明する。ときには自分のアイデアを形にし、プロダクトや事業として立ち上げる。
こうした経験は、履修登録だけでは得られません。社会の言葉と大学の言葉を行き来しながら、自分の役割を見つけていく。その橋渡しをすることが、MID Lab.の重要な役割でした。
どう続けるか?を考える
そして、これは、大学の外に持ち出してでも、継続すべき価値がある、と考えます。2026年度を最後に、私自身はiUを離れることになります。ですが、だからといって、そこで生まれたプロジェクトや関係性まで消えてよいとは思っていません。
むしろ、ここで育った価値は、大学の中だけで完結させるより、外の社会に向けてひらき、次の受け皿を探すべき段階に来ているのだと思います。
企業にとっては、新規事業、採用、広報、研究開発、地域連携、人材育成などの文脈で、こうしたプロジェクトをホストする意味があるはずです。地域や団体にとっては、若い世代との接点をつくり、新しい視点で課題を見直す機会になるはずです。
そして学生にとっては、大学の制度の内側だけに閉じない、もうひとつの実践の入り口になります。なにか、新しいMID Lab.との関わり方を、それこそメディア的なアプローチでデザインしていくことを目指すべき、とかんがえました。
これからの時代、大学に所属しているかどうかだけで、学びや挑戦の機会が決まるべきではありません。関わりたい人が、テーマごとに関わる。企業や地域が、その場を支える。学生や卒業生が、そこで経験を積む。そんな仕組みを、次のフェーズではより明確に作っていきたいと考えています。



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