東京・墨田の「下町人情キラキラ橘商店街」が #未来の食卓 において最先端であることに気づいた

下町人情キラキラ橘商店街の午後の風景。今晩の食卓のおかずを一品買って帰る高齢の男性 Sight
Sight

昨日、iU 情報経営イノベーション専門職大学 の近くにある下町人情キラキラ橘商店街にランチを買いに行った時のこと。

最近考えていた人口減少や未来の食卓というテーマで改めて下町情緒あふれる、ちょっとシャッターも目立ち始めた商店街を見てみると、ちょっと違った発見がありました。

ここは未来の食卓における「最先端」があるのではないか、ということでした。

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いったい、何が最先端なのか?

夕方の商店街で目につくのは、惣菜を前面に出しているお店の数々。お肉屋さんは精肉も一部ありますが、それより前に出しているのが調理されたお肉。しかもどれもお手頃な値段が付けられていて、楽しくなってきます。

そこを、杖をついたおじいさんが、その日の夕食にする一品を買って歩いて行く。ここまでで、ピンと来た方はいらっしゃるでしょうか。

墨田の高齢化が進む住宅地エリアにおいて、求められる食の環境が変化しており、下町人情キラキラ橘商店街の元気なお店は、そのニーズに見事合致しているということに気づいたのです。

昭和の小学生が学んだ商店街

商店街というと、八百屋さん、魚屋さん、肉屋さんを回って材料を買い集め、必要なときに酒屋さん、お米屋さんを訪れる、そんな使い方をイメージする方は、特に40代以上に多いのではないでしょうか。実際、小学校の社会の授業でも、そういう風景を校外学習(フィールドワーク)で学びましたし。

そこからスーパーマーケットが強い時代になります。近所に大型スーパーができると、買い物がそこに集約されるようになり、商店街のビジネスが食われていきます。こうして、シャッター商店街が生まれ、平成になって早々に、自分が小学生で学んだ商店街の当たり前が、ガラリと変わってしまうのです。

そして2024年のニュースは、大手スーパーの撤退の話題。イトーヨーカドーは、首都圏を中心に、店舗の閉鎖を進めており、3月12日も新たに6店舗の閉鎖が報じられました。

イトーヨーカ堂 東京・昭島市の「拝島店」など 首都圏の6店舗で閉鎖決定や検討を明らかに | NHK
【NHK】大手スーパーのイトーヨーカ堂。構造改革の一環として、首都圏の6店舗で閉鎖を決めたり検討したりしていることを明らかにしました。具体的には、東京・昭島市の「拝島店」を来月(4月)下旬に、埼玉県川越市の「食品館川越店」を7月下旬に、それ...

足を踏み入れつつある、料理しなくなる未来

今進行していることは、キッチンに立たない生活、「料理しなくなる未来」です。これは各世代それぞれの事情があります。

まず若い世代は、そもそも料理することを生活の前提としておらず、キッチンがないアパートに住む学生も一定数います。食堂がついている学生マンションもあり、土日はUber Eatsなどのフードデリバリー、という生活。

20〜40代の子育て世代は、子どもに美味しく栄養があるものを食べさせたい、という願いと、共働きの忙しさの中でのやりくりが求められる、非常に厳しい世代です。外食ばかりはイヤだけど、何品も家で作るような時間もない。夫・妻に関係なく、その日の夕食を担当してローテーションが回っていく。

そこで、一品を電子レンジのみの調理に任せたり、ミールキットを活かしたり、弁当屋の惣菜を足したり、いろいろな工夫を駆使して、毎日何とか切り抜けています。キッチンフル稼動では、成立しにくい日も増えてきました。

60代代以上の世代では、子どもが独立し、それまでキッチンに立ってきたお母さんが「調理定年」を向かえ、趣味的な料理以外辞めてはどうか?という提案がありました。

2021年7月に、婦人公論に掲載された樋口恵子さんの原稿で、「調理定年」の提案をしています。また2022年3月にはクロワッサンで、「台所の呪い」という表現をしています。

樋口恵子「年を取ったら『調理定年』。大切なのは、くたびれないごはんづくり」 高齢女性に多い栄養失調。「脱・手作り」レシピで防ぎましょう!|健康|婦人公論.jp
2021年、89歳となる評論家の樋口恵子さん。著書を通じて、自身の満身創痍ならぬ満身疼痛の「ヨタヘロ期」をユーモラスに綴っています。中でも読者の共感を集めているのが、「調理定年」の話。どうやらその定年、多く...
その「台所の呪い」、解きませんか。 「調理定年」を知って、気楽に食べて健康に。【編集部こぼれ話】 | からだにいいこと | クロワッサン オンライン
3月25日発売の『クロワッサン』1066号、「体の中から若くなる、カンタン健康習慣。」特集号のこぼれ話をお届けします。

そして単身高齢世帯も、キッチン離れが起きます。ひとりのために料理の手間をかけるのかどうか。

こうなってくると、商店街にしろ、スーパーにしろ、今までのように「キッチンで料理をする人」のための材料を売るビジネスをしていては、成り立たなくなることは目に見えています。人口が減る中で、さらに輪をかけて、料理する人が減っていくからです。

キラ橘は、料理しなくなる未来に対応していた

そうしたキッチンの風景を前提に、下町人情キラキラ橘商店街を見てみると、なるほど最先端!となるのです。

前述の通り、お店は材料ではなく、見た目も匂いも美味しそうな惣菜が前面に出ています。焼き鳥、天ぷら、刺し盛り、中華、おでん……。食べ歩きもできますが、それ以上にターゲットは、今晩のおかずです。

それぞれの各世代でキッチンを回避して食卓が囲めるようになるには、バリエーションに富んだ惣菜は不可欠です。下町人情キラキラ橘商店街には、そうしたお店が揃っていました。一人暮らしの学生から単身になった高齢者までの食卓を豊かにしてくれる商店街。

もちろん商店も人手不足、高齢化、後継者不足という共通の問題に晒されています。しかし、「商店街がまるごとキッチン」になる姿は、食卓の変化に対する一つの答えのようにも思いました。

未来の食という喫緊のテーマ

未来の食卓というテーマは、現代の食にうるさい日本において、ジワジワと確実に対応が迫られている重大なテーマであると思います。簡単に言うと、日本の現在の食卓の持続性は、さほど高くなく、何らかの変化を求められているという話です。

長寿、健康、何より飽きずに楽しめる。和食が2013年にUNESCO無形文化遺産に登録されて10年がたちますが、和食に限らない日本の食、食環境は世界からも評価されてきました。とにかく豊か。美味しい、楽しい、安い。米国・カリフォルニアの特に食にうるさいエリアに住んでいて痛感したのですが、日本の食環境は最強です。

その食環境は、ここ10年で明らかに崩れつつあります。高齢化・人手不足・後継者不足で人気店であっても容赦なく閉店するし、流通や天候などの問題で、イメージしていたタイミングで食材が手に入りません。

スーパー、チェーン店も含めて、日本の食が今のままあり続けると考えずに、より良い方向に変化して行くにはどうすれば良いのか、大学の研究プロジェクト「iU Future Eats」でも考えていきたいところです。

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