2025年11月5日、東京・渋谷の渋谷サクラステージで、「iUサクラステージゼミ vol. 6」を開催しました。ゲスト講師にはITジャーナリストの西田宗千佳さんに、シアトルからご参加頂き、テクノロジーの現在地についてのゼミを開催ました。
会場には25名の聴講者、オンラインでは最大120名の方にご参加頂き、白熱した議論が展開されました。
会場では、Apple Vision ProのPersonaを介してシアトルにいる西田さんが“等身大の存在感”で登壇。
続く本編では、
- iPhone 17シリーズの設計思想(熱設計・素材・ライン別の役割)
- スマホにおけるAIの現在地(Apple Intelligenceの遅れ/Android勢の強み)
- 地域別市場動向(米欧日・中国・韓国)
- 生成AIと著作権・Adobe MAXの最新トピック
- 日本の「スマホ新法」の狙いとユーザー影響(決済開放・機能公開・セキュリティ/プライバシー)
までを立体的に議論しました。
最後はQ&Aでハード/ソフトへの規制影響とプライバシーと利便のトレードオフを深掘りしています。
- アーカイブ版をご視聴頂けます。
- オープニングとVision ProのPersona体験
- Vision ProのPersonaがもたらす「実在感」
- iPhone 17シリーズの現在地:デザインは“用途”に結びつく
- スマホ×AIのいま:AIによる差別化はまだ“準備段階”
- Android勢のAI:Gemini連携・検索体験の先行
- 市場の温度感:米欧日と中国・韓国の“違い”
- 生成AIと制作現場:NotebookLM/ChatGPT/Adobe Firefly
- Adobe MAX 2025:“安心して使える生成AI”の設計
- 日本の「スマホ新法」:DMAを踏まえた“運用の妙”
- ユーザー影響の焦点:Wi‑Fi接続情報とプライバシー
- Q&A:規制でスマホ設計はどう変わる?
- Q&A:AI時代の“プライバシーを通貨にする”のか?
- トピック:米政権・大手来日とロビイング
- クロージング/お知らせ
アーカイブ版をご視聴頂けます。
オープニングとVision ProのPersona体験
冒頭、松村がゼミの出席管理をスマホのウォレットで行えることや、竹芝の研究発表イベント「iUtopia 2025」で同システムが公式来場証明として採用されたこと、最新版のスタンプラリー実装を共有。
日本円連動のステーブルコイン「JPYC」でガチャを回せる実機の話題もご紹介しました。

本日のゲスト西田さんをVision ProのPersona経由で招き、会場スクリーンに“実物大”で投影しました。

「回線が安定していれば目線やうなずきの遅延が小さく、画面会議より“そこにいる”感じで話せます。人間のサイズ感・距離感・低遅延の複合で実存性が生まれるんです。」(西田さん)
「暗いホテル客室でもPersonaなら表情がきちんと伝わる。環境への依存が減るのはコミュニケーションのバリアを下げるうえで重要です。」(西田さん)
Vision ProのPersonaがもたらす「実在感」

松村は、同じ服装・マイクまで再現したPersonaで登壇側の臨場感が得られること、白い壁面など空間のつくり次第で次世代コミュニケーションの最適解が変わり得る、と実感を共有しました。
「GoogleのProject Starlineのような大画面立体通話も“実在感”を出せます。50~55インチのテレビ+視線合わせでも似た効果は得られる。重要なのは正しいサイズ感と低遅延です。」 (西田さん)
iPhone 17シリーズの現在地:デザインは“用途”に結びつく

松村は、手元のiPhone 17 Pro/iPhone 17/iPhone Airを示し、“Pro Max一択”の潮流から役割分担明確化へ移っていると指摘。
標準モデルは需要過多で生産が追いつかない状況だと伝えます。 

「今年はデザインと構造で“用途別の価値”を作ったのが大きい。Proは熱を広く逃がす構造やアルミの筐体で動画・ゲーム時の発熱/電力を抑える狙い。Airは薄さ実現のために内部レイアウトやチタンのフレームで曲げ剛性を確保。標準は色と価格のカジュアルさを重視、コストを抑えつつ“ちょうどよさ”を提示しました。

“性能だけ”で選ぶ時代から、構造・デザインと性能が結びつく選び方へ。大量生産の強みを背景に、モデル間でボディ構造まで差別化してきたのは他社に少ないアプローチです。」(西田さん)
スマホ×AIのいま:AIによる差別化はまだ“準備段階”

松村は「Apple Intelligenceがローカル志向で、競合ほどの差別化軸になり切れていない」と現状整理。
「本来はAI強化GPUで“AIを使っても電池が持つ”を打ち出したかったが、Siriの改良が間に合わず訴求不足に。とはいえ、翻訳や要約は“刺さる層”が家族に数人レベル。多くの人に刺さるのは、自分の文脈を理解し先回りするAIで、今年はまだ決定打が不在です。例外はNotebookLMのように“刺さる”人が多いカテゴリ。
結果、電池持ちや堅牢性など“地に足のついた改善”の訴求が効き、iPhoneは順調。他社は派手なAI機能で伸ばすほどには至っていません。」(西田さん)
Android勢のAI:Gemini連携・検索体験の先行

松村は、Google/サムスンの“AIスマホ”文脈づくりを挙げます。 
「PixelはGmail/カレンダーなどアプリ内データ×Geminiで価値を出す設計。Galaxyは翻訳・要約など自社機能にGeminiを重ねる。
さらに日本のシャープは通話詐欺検知や影消し撮影など“国内事情に刺さるAI”を自前で積む“うまさ”があります。」(西田さん)
その上で、Androidスマートフォンの優位性について、次のように指摘しました。
「画像・音声からの検索はAndroidが先を走っています。Google Liveを使った“分からない物を見せて修理法を教わる”といったコンテキスト検索は、今後の重要分野です。」(西田さん)
市場の温度感:米欧日と中国・韓国の“違い”
松村は、日米欧でiPhoneシェアの伸長を実感しつつ、中国の超高価格帯や折りたたみの“ニッチでも成立”現象を紹介しました。
これに対して、西田さんは、iPhone人気の上昇メカニズムと、第3極の登場について分析しています。
「米欧日ではコミュニティ性(AirDrop等)が支持されiPhone人気が上昇。一方で『皆がiPhoneでつまらない』という声も。そこでNothingやシャープのように価格とデザインの妙で存在感を出すメーカーが光ります。」(西田さん)
中国と韓国の市場の特殊性についても、リアルな視点を提供して下さいました。
「中国は超高価格機も少量で成立する特殊市場。韓国はサムスンの圧倒的基盤でコミュニティやデバイス事情が他国と異なるのがポイントです。」(西田さん)
生成AIと制作現場:NotebookLM/ChatGPT/Adobe Firefly
松村は、大学授業で短時間のAI動画制作が実用域に来た体験を共有しました。
現存する1社の製品やサービスを選び、自分なりに新世代向けのマーケティングプランを考え、これのCMやポスター広告をプロトタイプする、というビジネス科目の授業の様子を紹介しました。
西田さんの普段のAI活用について、会場の興味が集まる中、AIと仕事をする日常について、次のように触れました。
「取材素材をNotebookLMに集約し、『この人は何を言っていた?』『市場状況は?』を対話で整理。本文は自分で書くが、素材の編み上げはAIで効率化しています。
原稿はChatGPTに“編集者視点”で校閲させ、誤りを減らす。PULSEは自分の予定や過去のチャットも踏まえて『今日の取材に備えよう』と先回りでまとめを出してきて驚きました。」 (西田さん)
また、生成AIの画像生成については慎重な姿勢を持ちつつも、商用利用が可能と確認されているAdobe Fireflyの価値についても強調しました。
「画像やヘッダーは必要に応じFireflyで。権利配慮を考えるとFireflyを使うことが多いですが、今後はわかりません。」 (西田さん)
Adobe MAX 2025:“安心して使える生成AI”の設計
生成AIと権利の問題について、議論はもう少し深掘りして進みました。松村は、著作権と学習データを巡る最近の揉め事(新聞社×生成AI)に触れ、Adobeの立ち位置を問います。
「アウトプットの責任は出す側にあるのが大前提。そのうえで“意図せず似る”リスクに備え、FireflyはAdobe Stock起点の学習で権利処理を担保してきました。」(西田さん)
Adobeはライセンスした手元にある膨大な画像の学習を通じて、出力された結果がAIによる生成という観点においては、問題がないという安心感を、Fireflyがもたらしてくれています。
その一方で、Fireflyのみにこだわらない姿勢もまた、2025年のAdobeの変化でした。
「3月以降は方針を変え、ユーザーがモデルを選べる柔軟性を確保。Adobeが各社モデル利用料を肩代わりする形で請求を一本化し、NGワード等の安全枠は共通で担保。
生成物はそのまま“完成品”で使うのではなく、編集ワークの中で自分の創作に仕上げる──ここにAdobeの思想があります。」(西田さん)
日本の「スマホ新法」:DMAを踏まえた“運用の妙”
松村は、12月18日施行の「スマホ新法」の骨子(寡占的プラットフォームの透明性確保、外部決済や機能開放の扱い)を整理。
今後、スマホ新法によって何が起きそうなのか、議論が進みました。 
「DMAの問題点を見たうえで日本版をデザインしたのが特徴。政治的色合いの強すぎる規制は避け、決済の自由度や透明性を重視。機能公開はユーザー不利益(安全・プライバシー・子ども保護)を例外規定に据えて運用しよう、という姿勢です。」(西田さん)
欧州で問題となっているDMAと、日本のスマホ新法の違いについて、改めて指摘をしました。その上で、今後の見通しについて、次のように述べています。
「Apple/Googleの声も聞く“玉虫色の解”になりやすい反面、『ひどい規制』にはなりにくい可能性。日本企業は決済開放が本質と見ており、実務はそちらが先行しています。」(西田さん)
ユーザー影響の焦点:Wi‑Fi接続情報とプライバシー
松村は、改めて、スマートフォンのプラットフォーム規制のリスクについて、議論を戻しました。欧州で問題となっている、Wi‑Fi接続履歴の扱いが、行動ログと直結するプライバシー上の重大論点だと述べました。
「アクセスポイント接続履歴が外部に漏れれば、病院→スーパーの足取りまで追跡可能。匿名化・ユーザー同意・警告表示の明確な運用がなければメリットはない。ここはガイドラインの透明性が生命線です。」 (西田さん)
その一方で、日本のスマホ新法の本丸とも見られる外部決済機能について、松村はチャットのご質問で頂いていた、韓国が2021年にアプリ課金規制を先行導入した事実を紹介。
「サードパーティ決済に替えても手数料が積み上がり、収益的に大差なしという不満が出た。
日本はこれを踏まえ、決済事業者の参入と条件設計次第で初めて意味が出る、という見立てです。」 (西田さん)
Q&A:規制でスマホ設計はどう変わる?
松村は「ハードは大きく変えにくく、影響はソフト機能の出し分けが主戦場」と説明しつつ、中国向けSIMスロット対応のように地域規制がハードへ波及する例も紹介。
西田さんは「独自拡張(規格の“上”)は差別化要因なので、全排除にはならないでしょう。ただ特別機能の他社接続配慮が求められ、差が小さくなったり提供が遅れたりはあり得ます。極端な機能封鎖は起きにくいと見ています」と応えました。
Q&A:AI時代の“プライバシーを通貨にする”のか?
松村は、若年層ほどプライバシー防衛意識が高い実感(顔出しNGの増加など)を共有。小学生も、自分の顔を親のInstagramやFacebookに載せてほしくない、雑誌や広報に写真を使われたくない、という意識がある点を紹介しました。
「ネットサービスは“情報を渡せば利便が返る”設計でしたが、AIは“私の明日の予定や対話履歴”のような本人コンテキストを深く要します。
クラウド集約(Google等)と端末内処理(Apple等)のアプローチ対決が本格化。契約で守るのか/技術で閉じるのか、個人情報と属性情報の線引きも曖昧になりがちです。」(西田さん)
その上で、AI技術の進歩から、あたかも本人が実際にその場所に行ったり、そのような振る舞いをしたようなリアルな写真や映像が生成できてしまう点から、リスクが高まっています。
「顔のディープフェイク被害の深刻さから、“顔を晒しつつ守る”という二律背反が若い世代に重くのしかかる。法規制や事業者への強いエンフォースメント、そして機能制限も辞さない設計が必要になるかもしれません。」 (西田さん)
トピック:米政権・大手来日とロビイング
最後に、松村は、米トランプ大統領が来日時にティム・クック氏も来日し、日本側にスマホ新法に関して、「米企業を不当に扱わない」文言を盛り込ませた政治力学を解説。
西田さんも、日本の運用は“急峻”にならない方向と見立てます。 
「外部決済の拡充はAppleにとっても致命的マイナスではない。ただしユーザーへの警告抑止やデータ共有強制など直接的に不利益が及ぶ部分は拒否すべき領域です。」 (西田さん)
クロージング/お知らせ
西田さんは、長年精力的にテクノロジー、クリエイティブ、そしてライフスタイルの取材を続けられているジャーナリストの大先輩。
今回の議論も、聴講生の皆様のみならず、私もとても勉強になりました。改めて、この場で感謝申し上げます。
西田さんは、年末から来年にかけて、新著を準備されているとのこと。また、メルマガやXのサブスクでの連載も展開されています。
ぜひこちらもチェックしてみて下さい。




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