iU大学の看板授業「イノベーションプロジェクト」の #失敗プロジェクト をアーカイブし後輩に託す「iU innovation database」プロジェクトを公開

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2024年3月13日、iUの研究員が集うイベント「iUマルシェ」に合わせて、iU 情報経営イノベーション専門職大学の有志学生と松村太郎研究室は、「iU innovation database」を公開します。

このプロジェクトは、1期生でこの春卒業する米山慶太の呼びかけで、竹川希歩、佐藤集が中心となって、Notionで実装しました。iUの学生は、授業などで作ったビジネスプランのピッチ資料を、投稿し、公開と活用レベルを設定した上で、iUの学生に共有する事ができるようになります。

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iU innovation database

iU innovation database screenshot
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※学生向けに公開されているGoogleフォームに情報の入力とファイルのアップロードをすると、Notionのデータベースに格納される仕組みを実装しています。

プロジェクトの背景

看板授業「イノベーションプロジェクト」

iUでのイノベーションプロジェクト、クラス内ピッチの模様

iUの看板授業「イノベーションプロジェクト」(通称:イノプロ)は、1年〜4年の各学年必修科目として設定されており、半年に1度、4〜5人程度のチームを作り、全く新しいビジネスプランを作り上げピッチするという講義です。

1学年に36チームあることから、iUでは毎年、最大288件のビジネスプランが生み出される「仕組み」となっています。

中には、イノプロで着想したアイデアを実現したいとして起業したり、イノプロで一緒になったメンバーと、全く異なるアイデアでスタートアップしたりするなど、iUの起業文化の原動力ともなっており、2024年3月に卒業する第1期生の10%以上が、卒業後自分や仲間が起業した事業にフルタイムで取り組みます。

また、単に起業というスタートを切るだけではありません。例えばNPO活動や、アート活動など、会社という形態にとらわれない「活動」として昇華するプランもありました。

量産される「失敗」

イノプロで作られたビジネスプランは、最終的に、クラス内のピッチで代表チームが選ばれ、1クラス2チームが学年全体のピッチに臨みます。クラス内ピッチで選ばれなかったプランはもちろんのこと、学年全体ピッチに出たチームも含めて、全てのプランがスタートアップ、起業に結び付くわけではありません。

ほぼ98%のプランが、クラス内ピッチ、もしくは学年全体ピッチを最後に、進捗が止まります。つまり授業の毎学期が終わるごとに、それらのビジネスプランのステイタスは「失敗」になるのです。

もちろん、失敗となったからといって、単位がもらえないとか、評価が低いと言うことはありません。むしろiUは、学長含め「どんどん失敗しよう」と、失敗を奨励している大学です。ビジネスプランを作り上げる過程での学びと経験に、大いなる価値がある、と教員としては考えます。

その一方で、このプロジェクトに携わったiUの学生との議論として、「本当にそれだけで良いのか?」という部分がありました。

失敗プロジェクトを、じっくり振り返りたい

そこで一つ目のポイントは、きちんとプロジェクトを記憶し、上手くいかなかった原因を反省するタイミングがあるか?という部分です。

授業なので、きちんと評価され単位がもらえることも大切ですが、iUの学生からすると、それ以上に、もっとじっくりと自分たちが考えたプランの善し悪しを、様々な視点で振り返りたい、というニーズがあります。

そうした振り返る機会に対してニーズがある一方で、反省する時間がなかなか得られていない、その手段がない、というフィードバックがありました。

あ、これってあのときのアイデアじゃ?

もう一つのポイント。そんな学生がいちばんショックを受けるのが、この瞬間です。

「あ、これって、あのときのアイデアじゃ?」

しかし、これは前述の振り返る機会としては、大きなチャンスです。

松村としては、アイデアはひらめきや天才のものではなく、新結合だと定義しています。これは、学生にも常々話していますし、iUで開発している「妄想学」でも、同様の定義を元に設計をしています。

そのため「あのときのアイデアじゃ?」という経験は、実はとても有益な、反省ポイントへの気づきになると思うのです。同じようなアイデアを持ちながら、具現化できなかった学生と、具現化したスタートアップの違いは何かを分析することにつながります。

もちろん「学生だから」という理由は、ビジネスの世界で何の意味も持たないという前提の上で、じゃあ人・物・金といったあらゆる意味でのリソースが動かせれば実現できたのか。ビジネスモデルの練り込みが甘かったのではないか。ターゲティングが間違っていなかったか、など。

何で自分がそのプランを実行できなかったのかを考えることは、とても大きな学びになるのです。

実際に存在する「あのときのアイディアじゃ?」

面白いことに、「あのときのアイディアじゃ?」という気づきは、意外なほど頻繁に訪れます。しかも、2〜3年後に。

例えばコンビニジムとして大成功したチョコザップ。あのようなスペースの使い方を提案するアイデアは、iUのイノプロでもいくつか出ていました。しかしイノプロのアイデアには、チョコザップの名前の通り「ちょこっと初めて見ようかな」という人を月額2980円という低価格で開拓する、既存のターゲット外にリーチするというマーケティングがなかった。

このような失敗と反省の組み合わせによる学びを、確実に得られるようにすることは、iUにとって非常に有益だと考えたのです。

カルチャーとしての「失敗」アーカイブ

失敗をアーカイブする

そこで、今回のiU innovation databaseです。中には企業にこぎ着けたアイデアもありますが、大半が実際にビジネスとして実現しなかった「失敗」のプランを、きちんとアーカイブすることからはじめます。

失敗した人、似たようなアイデアを考えようとしている人が、これらを参照しながら、どうすれば良いのかを考え学ぶ、そんなサイクルを作り出す基盤にしようとしています。

プロジェクトのメンバーは、いつ作られたアイデアなのか?どんなカテゴリに属しているのか?といったタグ付けにこだわり、アイデアがきちんと分類され、検索可能になるようにしていました。

また、ピッチ資料を投稿出来るようにしており、最終的に、どのようなアイデアにまとめたのか、どのように有用性をアピールしようとしていたのか、も振り返ることができます。

「iU Commons」化して後世に託す

もちろんアイデアの中には、実現に向けて動いているものもあります。これはアイデアの主によって、引き続き管理されるべきではないかと思います。その一方で、その場で終わってしまったもの、考えや発展を打ちきったものについての扱いについても、メンバーが議論したポイントでした。

結果としては、「iU Commons」として公開し、アイデアの再利用や分析を可能とする仕組みを取り入れることとしました。こうして、失敗アーカイブの蓄積が、後の自分、もしくは後輩のイノプロに役立てられるようにしたわけです。

同じ轍は踏まない、だとか、オレの屍を超えていけ、だとか、そういうことです。

失敗を共有することをiUのカルチャーにしたい

今回、3人の学生が1ヶ月でプロジェクトを考え、実装してくれました。こうした身軽なところもまた、iUらしい部分だったと思います。今後、このデータベースにアイデアが投稿されていくことで、iUの失敗のアーカイブが充実していきます。

これこそが、新しくできたiUという大学のカルチャーの1つになって欲しい、というメンバーの願いが込められています。

今後の動きや展開も、こちらで触れられればと思います。

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