2025年12月7日、渋谷サクラステージで開催された「SHIBUYA Tech FESTIVAL」2日目に開催されたセッション「2025総決算!メディア人が語る今年のAppleとテック業界」は、非常に興味深い、2025年を総括する議論が交わされました。
アーカイブはこちらからご覧頂けます。
HHKBでテキスト中継を敢行

松村は今回、会場から、HHKB Hybrid Type-S(無刻印モデル)を使ってリアルタイムのテキスト中継を行いました。
こちらで、テキスト中継のライブもアーカイブしています。
無刻印のミニマルなキーにより、視界のノイズがなく、集中してタイピングができたことは大きな利点でした。
今回用いたHHKB Hybrid Type-Sは、静電容量無接点方式による静かな打鍵感と、Bluetooth/USB-Cによるデバイス切り替え対応、さらにミニマルな60キー配列とキーマップ変更機能などにより、報道や長時間のタイピングにも向いたキーボードです。 
以下に、この中継ログをもとに、参加者の発言とその背景/含意を整理したレポートをお届けします。
はじめに:なぜ今年の座談会が重要だったのか
2025年は、AIの急速な進化、新しいハードウェアの登場、そして消費者や開発者の期待の変化という三重の変化が、テック業界全体を揺さぶった年でした。本座談会は、メディア/ジャーナリズムの視点から、それらを振り返り、来年に向けた示唆を探る貴重な機会でした。
編集長やジャーナリストといった立場から、「業界の流れ」「ユーザーの反応」「今後の課題と可能性」を多面的に議論できた点に、大きな意義があります。
今回の登壇者は以下の通り。
- 「Mac Fan」編集長:笹本貴大氏
- 「テクノエッジ」編集長:矢崎飛鳥氏
- ITジャーナリスト:西田宗千佳氏
- ITジャーナリスト:山本敦氏
- ガジェタッチ編集長:リンクマン氏
それぞれ異なる媒体、異なる立場から、今年のテック業界を批評・分析。多様な視点が交錯しました。
AIの進化と、出遅れているAppleの対応
笹本氏、矢崎氏からは、2025年にAIが猛スピードで進化したことで、「単なる機能強化」を超えたユーザー体験の変化が生まれたという指摘がありました。
特にAppleが、これまでの「ハード+OS+エコシステム」だけではなく、AIを軸とした新しい体験価値の提示を、ようやく模索し始めたとの見立てです。
一方で西田氏は、その動きには慎重さを求めました。
AIがもたらす利便性と同時に、プライバシーや倫理、誤動作のリスクがあるため、短期的には「バランス」が重要になると述べていました。
生成AIで一色だった2025年のテック業界だが……
2025年は、生成AIの応用が広がり、画像生成、翻訳、文章生成、コーディング補助などが一気に普及しました。
そうした潮流を背景に、Appleのような巨大プラットフォーマーも、AIを単なる「新しい機能」ではなく、「OS/デバイス戦略の中核」に据える可能性が高まりました。
編集者の立場からは、これまでの「アップデート=小さな機能追加」ではなく、「体験の再定義」が起きた年と見る向きがあります。
ただし、ユーザーと社会が抱える懸念――データの扱い、誤生成、偏り、過信――をどう設計と制度で担保するかは、引き続き重要な論点です。
新しいデバイスとエコシステムの広がり
矢崎氏からは、2025年に登場した複数の新デバイス(ウェアラブル、拡張現実(AR)機器、次世代マウス/トラックパッドなど)により、ハードウェア市場およびエコシステムの広がりが再び加速した、との意見がありました。
特に、単一のデバイスにとどまらず、複数のデバイスが連携する「ユーザー体験のシームレス化」が、消費者にとっての新しい価値になりつつあるという指摘です。
長らくスマートフォンとノートPCが主戦場だったデバイス市場において、2025年は「補完的なデバイス群」が改めて脚光を浴びた年でした。
AI対応のイヤフォン、ヘッドセット、ARデバイスなど、用途特化型の機器が増え、ユーザーは必要に応じて使い分けるスタイルにシフトしています。これは、1台1デバイスの従来モデルから、複数デバイスによる「体験の分割と統合」への転換とみなせます。
業界を観測している面々の立場からは、こうした変化は「エコシステム競争再燃」の予兆と捉えられます。単なるスマホ+PCの組み合わせだけでなく、ウェアラブル、IoTデバイスなどを含む広義のエコシステム戦略の重要性が高まるでしょう。
業界全体を揺るがした新トレンドと、不確実性
山本氏は、今年の業界トレンドは「一方向ではない混合状態」、すなわち「急激な進化と混沌」が同時に進んだ年であったと語りました。
その背景には、AI、デバイス、規制、経済状況……と多様な要素が絡み合っており、今後の方向性を予測しづらい、という不安も示されました。
一方、西田氏は、その混沌こそが「次のイノベーションの起点」になる可能性を指摘。過去のような「一次元の成長モデル」ではなく、「分岐と収束」のサイクルを繰り返すことになるだろう、との見通しを示しました。
2025年のテック業界は、成長、規制、倫理、消費者ニーズという複数のベクトルが同時に作用しました。
例えば、AIの普及に伴う規制議論、プライバシーへの懸念、経済の不確実性、サプライチェーンの混乱──。こうした「外部要因」が、単なる技術競争を超えて、業界全体の構造変化につながる可能性があります。
ジャーナリスト/編集者として注目すべきは、この「分岐と収束」の中で、どの企業、どのプラットフォームが「収束点」を握るか。あるいは、新たな価値観やユースケースを提示できるか、です。
来年以降、そこに注目が集まるでしょう。
なぜ「メディア人の視点」が重要か
今回の座談会で示された議論の多くは、「技術そのもの」ではなく、「それによってもたらされる体験」「社会的な受け止められ方」「メディアの視点での批評・解釈」が中心でした。
これは、単なるガジェットレビューではなく、テック業界の「変化の構造」を読む上で不可欠な視点です。
特に、AIやデバイスの進化が社会にどのようなインパクトを与えるかを考えるとき、報道・ジャーナリズムの視点は重要です。技術の明るい側面だけでなく、リスクや倫理、使われ方の多様性を抑えることで、バランスの取れた理解が可能になります。
2025年をどう語るか — そして来るべき2026年へ
2025年は、テック業界にとって転換点ともいえる年でした。AIの台頭、新デバイスの群雄割拠、エコシステムの再構築、そして業界全体を揺るがす不確実性。
これらを経て、「安定的進化」の時代はひとまず終わった。これからは、「混沌の中の選び直し」「価値観の再定義」が求められるフェーズに入ると、多くの登壇者が共通して感じています。
ただし、その混沌が必ずしもマイナスとは限りません。むしろ、「従来の枠組み」に縛られない、新しいサービスや体験が生まれる可能性を秘めています。
重要なのは、技術やマーケティングの側だけでなく、社会、制度、倫理、ユーザー体験――あらゆる視点を交えて、慎重かつ創造的に次の一手を描くことです。
今回の座談会と中継は、その第一歩として、メディア/ジャーナリスト/読者をつなぐ架け橋になったと考えています。2026年に向け、私はこの議論をさらに深め、読者とともに考えを進めていきたいと思います。



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