ソニーはBRAVIAを再編し、TCLはアートテレビで攻める – 2026年にテレビが再び始まった件

TCL A400 Pro shows beautiful Monet painting. photo by g.O.R.i / gori.me Tech
TCL A400 Pro shows beautiful Monet painting. photo by g.O.R.i / gori.me
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テレビ産業の主戦場が「画質」から「空間」と「供給力」に移り始めた……。

現在TCLが日本のクラファン「GREEN FUNDING」で展開している「A400 Pro」は、壁に飾ることを前提にしたアートテレビです。

世界初、Gemini搭載の壁掛けアートテレビ「TCL A400 Pro」AIがあなたが見たい映像をリストアップし「未来型の鑑賞体験」が実現次世代Mini LED×10億色の量子ドット|288Hz高速応答|ONKYO 2.0ch音響
TCLは、ワールドワイド・オリンピック・パラリンピックパートナーとして、競技会場のデジタルディスプレイ供給や選手村の家電の提供を通じて、世界最高の舞台を支えています。そのTCLから生まれた、世界初のGemini搭載・壁掛けアートテレビ「A4...

木目フレーム、薄型設計、アート表示、そしてAI対応。見た目はインテリア寄りですが、中身はMini LEDや高リフレッシュレートを備えた本格派です。しかも、今後のアップデートで、世界初となるGemini搭載のテレビになることも決まっています。

声でテレビを直接、しかも曖昧なリクエストも含めて操作できるようになると、少なくとも自分はとても嬉しい。いつも置き場所を決めているはずなのに、いつもリモコンを探してる、そんなテレビ生活に終止符が打たれますね。

その一方で、ソニーは3月31日、TCLとの間で、テレビ事業の譲渡と新会社設立を発表しました。ここで設立されるのが、合弁会社「BRAVIA株式会社」です。所在地は東京・大崎のソニーシティ大崎内。出資比率はTCL 51%、ソニー49%で、2027年4月の事業開始を予定しています。

承継対象は一般消費者向けテレビのBRAVIAだけではありません。B2B BRAVIA、業務用LEDディスプレイ、プロジェクター、ホームシアター、コンポーネントオーディオまで含む、ソニーのホームエンタテインメント事業全体です。

さらに、マレーシアの製造子会社Sony EMCSの持分100%はTCLへ譲渡され、上海の製造子会社についても譲渡協議が続いています。

この動きを「ソニーがテレビ事業を手放した」とだけ理解すると、少し雑と言えます。実際に起きているのは、BRAVIAというブランドと事業の再編です。ソニーは完全撤退ではなく、BRAVIA株式会社に49%を持ち、ブランドと技術と運営ノウハウを残す。

一方でTCLは、製造、ディスプレイ技術、サプライチェーン、コスト効率の中核を担う。つまりこれは、ブランド企業と製造企業の役割分担を、かなり明確な形で組み直す再編だと言えます。

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TCLは、もはや「安いテレビの会社」ではない

TCLは1981年創業の中国発テクノロジー企業です。TCLは「The Creative Life」の略とされており、2024年には85インチ以上のサイズのテレビ、Mini LEDテレビ、そしてGoogle TV搭載テレビの出荷台数世界トップに輝いています。

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もともとは中国初期の合弁企業のひとつとして出発し、その後、グローバル展開を加速させてきました。トムソンのカラーテレビ事業やアルカテルの携帯電話事業の取得、欧州R&D拠点の整備、Mini LED技術の投入などを重ねながら、テレビとディスプレイを核に大きくなってきたことが分かります。

現在は160カ国以上で製品・サービスを展開し、TCL自身は世界のトップクラスのテレビブランドであることを前面に出しています。

ここで重要なのは、TCLの強みが「価格」だけではないことです。

むしろ本質は、ディスプレイ技術と供給力にあります。TCLはQD-Mini LEDを、大画面ディスプレイの次世代技術として位置づけています。QLEDとOLEDの長所を組み合わせ、ピクセルレベルに近い精度でバックライトを制御しながら、高輝度、高コントラスト、広色域、長寿命を両立させる、という考え方です。

テレビの価値が「どれだけ安いか」から「どれだけ高度な表示を安定供給できるか」に変わるなかで、TCLはかなり強いポジションにいます。

A400 Proは、“飾るテレビ”で終わらない

そんな注目が集まるTCLが、日本向けにクラウドファンディングを仕掛けている製品が、A400 Proです。この製品が面白いのは、アートテレビという見せ方をしながら、スペックを充実させている点です。

TCL Japanの説明では、この製品は「アート×テクノロジー」の融合を掲げた市場検証プロジェクトです。

39.9mmの薄型設計に、ライトウォールナット調のフレーム、未視聴時に名画やAIアートを表示するアートギャラリーモード、そして低反射HVAパネルを組み合わせ、「黒い板」としてのテレビではなく「空間に馴染む表示装置」として提案しています。

そこに載っている技術も出し惜しみがありません。

55型と75型はMini LEDと量子ドットを採用し、4K/144Hz、DLG時最大288Hz、VRRに対応します。HDRはDolby Vision IQ、HDR10+、HLG。音響はONKYO監修で、Dolby Atmos、DTS-Xもサポート。

Google TVを搭載し、55型と75型はGemini AIにも対応します。プロジェクトページでは「世界初のGemini搭載・壁掛けアートテレビ」と打ち出しており、近接センサーや遠距離マイクを組み合わせたハンズフリー操作、対話型の視聴体験まで訴求しています。

通常販売価格は43型が8万9800円、55型が14万9800円、75型が27万8000円。クラウドファンディングでは先行支援価格が設定されており、4月1日時点で支援総額は約4853万円、支援者は400人に達しています。

インテリアとしてのテレビというチャレンジをTCLが仕掛けているのは、若干、テレビ市場の正面からのアプローチを避けているようにも見えます。ただ、ソニーとのディールの存在を考えると、うまい切り口での展開、と見ることができます。

BRAVIA株式会社で、ソニーのDNAはどこに残るのか

この流れの中で最も気になるのは、「ソニーらしさ」がどこに残るのか?でしょう。

1月の基本合意時点でソニーは、新会社がソニーの高画質・高音質技術、ブランド価値、サプライチェーン管理を含む運営ノウハウを活かし、TCLの先進ディスプレイ技術、グローバル規模、産業基盤、垂直統合型サプライチェーンを使うと説明していました。

ここは非常に重要です。少なくとも公式発表が示しているのは、ソニーが残すのは単なるロゴではないということです。

画質と音質の作り込み、BRAVIAというプレミアムブランドの信頼、商品企画から販売・サポートまでを含む事業運営の質。こうした部分が「ソニーのDNA」です。逆にTCLが担うのは、パネル、製造、コスト、調達、量産です。

テレビ産業では、ブランドだけでも勝てず、製造力だけでも勝てません。

映像の作り込みやブランド体験を持つ企業と、供給力とディスプレイ技術を持つ企業が、分業して勝ちに行く時代に入ったということです。BRAVIA株式会社は、その象徴的な器だと言えます。

テレビの競争軸は、もう「画質だけ」ではない

A400 ProとBRAVIA株式会社を並べて見ると、いまテレビ市場で起きていることがよく見えます。

ひとつは、ディスプレイ産業としての再編です。Mini LED、量子ドット、大画面化、高リフレッシュレート、低反射処理。こうした領域は、製造スケールと部材調達力が効きます。

もうひとつは、生活空間の再設計です。テレビは「番組を見る箱」ではなく、壁に掛かり、部屋の雰囲気を決め、AIと結びつき、視聴していない時間にも価値を持つ存在になりつつあります。

TCLのA400 Proは、その後者を正面から取りにきた製品です。そしてソニーは、BRAVIAを事業会社に切り出しつつ、ブランドと体験価値を守る形に入った。

これら2つの動きは、極めて戦略的な連動性を感じずにはいられません。テレビの次の主戦場が、画質単独ではなく、「表示技術」「空間設計」「AI」「ブランド運営」「供給力」の掛け算に移ったことを示す、と私は見ています。。

今回のニュースは、単なるクラファン新製品の話だけでも、単なる事業譲渡の話だけでもありません。

TCLが「アートのようなテレビ」を売っているのは、未来のリビングを取りにいくため。ソニーがBRAVIA株式会社を立ち上げるのは、ブランドの価値を残しながら、その競争に勝てる構造へ組み替えるため。

そういう意味で、テレビは、まだ終わっていません。むしろ今、かなり面白い局面に入っており、非常に注目に値する1年になりそうだ、と感じています。

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